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サムオブ井戸端話 #112『2000年以降の邦ロックベストソング100 vs 実感』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

「2000年以降の邦ロックベストソング100」という企画が話題になり、まんまと楽しんだカンノメンバー。細かい箇所を突くランキング企画はいつも個々の思いとの相違が発生してしまうのに、なぜ人はランキングを作り、そのランキングを見ては意見表明をしてしまうのかついて語りました。

 

 

カンノ:「2000年以降の邦ロックベストソング100」というランキング企画がX(旧Twitter)で行われていました。この手のものが好きな人たちの間ですごく話題になりましたね。

カンノ:「このランキングは果たして有効なのか?」という意味でめちゃくちゃ議論がされました。賞賛のポストも、叩かれているポストも数多く見かけました。ただ、そういう議論が起こっている時点でこのランキングは大成功していると思います。で、僕もこのランキングを見て、いろんなことを思った内の一人です。逆に言うと、そういうことも含め楽しみました。そして、このランキングをカウントダウン順にプレイリスト化したものもあったので、サブスクで聴けるものは通しで聴きました。

カンノ:なので僕は普通の人よりもこのランキングをめちゃくちゃ楽しんだ人です(笑)

YOU:そうだね(笑)

カンノ:で、YOU-SUCKさんはこのランキングはどうでしたか?

YOU:まずは個人の偏った感想を喋りますね(笑)サンボマスター世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」が25位に入っていましたが、いやいや、「歌声よおこれ」だろ。

カンノ:出ました、サンボマスター原理主義(笑)

YOU:みたいな感じで、個々のアーティストで「これじゃねえだろ」って思いが出てきてしまったりしました(笑)

カンノ:まぁ、わかりますよ(笑)かつてこのサムオブでも喋りましたが、同じようなランキング企画で、関ジャムの「令和に活躍する若手アーティストが選ぶ最強平成ソングベスト30」っていうものもありましたね。

カンノ:で、あれは2位にキリンジ「エイリアンズ」が入ったことによって議論が発生しました。

カンノ:そして「2000年以降の邦ロックベストソング100」でも「エイリアンズ」は14位に入っています。で、「キリンジは邦ロックなの?」っていう疑問が生まれます。

YOU:あ~、関ジャムは「J-POP」で、今回のランキングは「邦ロック」っていう違いね。だから、平成ランキングに入ってきがちな宇多田ヒカルとかは今回は入ってこないと。

カンノ:そうそう。ただ、「エイリアンズ」を邦ロックとするかどうかの回答はとくに示されていないなと。

YOU:まぁ、でもギターミュージックだからね、広義の…。

カンノ:ほら、曖昧になった(笑)ね、疑問符がつくでしょ。まぁ、べつにいいんですよ。なにかガチガチに決まったルールがあるものではないと思うので。このランキングが正しい、間違っているという議論もするつもりは毛頭ございません。でね、関ジャムもそうだし今回の邦ロックランキングもそうだけど、ランキングって可視化されちゃうじゃん。「この曲はこのランキングにおいて何位だ」ってわかっちゃうじゃん。そのうえで聴くと、なんだかモヤモヤしてしまうというかさ。で、このモヤモヤは「ランキングと実感は全然違う」っていうことだと思うんだよ。

YOU:そりゃランキングと個々の思いの相違は出てくるよね。

カンノ:で、関ジャムのときに痛く思ったけど、ランキングにすると相違が出てくるに決まっているのに、人間はいつもランキングを作りたがるというさ。

YOU:そうね~。

カンノ:絶対に違ってくるのにランキングにしたがるんだよ。で、違うってわかってるのにランキングを見ちゃうの(笑)で、「全然違う!」って言いがかりをつけるの(笑)全部、何?

YOU:アハハハハッ!

カンノ:ランキングが好きすぎるのは日本人だからなの?

YOU:でもランキング自体は海外にもあるよ。

カンノ:いや、こんな細かいところをつくランキングってあるかな?

YOU:ちょっと話は変わるんだけど、俺の仕事柄、証券会社のウェブサイトとかをよく見るの。そのウェブサイトに絶対にあるものって、今日売買された株のランキングなの。株のランキングって、ほかの人が売買した株を見たがるってことなの。「これが人気の株です」みたいなものをすごく見たがるの。でも株って一般的に、ほかの人が騒いで買ったときにはもう高値がついてるの。

カンノ:ある種、「終了です~」みたいなことだ。

YOU:そう。だから話題になる前に買わなきゃいけないのに、ランキングを見て買う人って世の中には大勢いるんです。もちろん売る人もいるんだろうけど、買う人がほとんど。で、高値掴みして、暴落が起きて、「損した~」って騒ぐ人が多いんですよ。でも、そんな仕組みがわかっているにも関わらず、証券会社のウェブサイトで売買のランキングをやめないのは、それを見て買う人がいっぱいいるからなんだよね。だから、もしかしたらそういう国民性っていうのはあるかもしれない。

カンノ:これは現在制作中の『SOMEOFTHME OF ZINE Vol.4』のみに掲載予定で、このブログには載せない予定なんですが、ジャニーズの話をしたじゃないですか。そのなかで「日本人ってムードとかモードに従ってしまうのはなぜだろう?」っていう話になりました。そこから、日本のバイラルチャートってあまりにも上位に入ってくるミュージシャンが変わらなさすぎるっていうことについて喋りましたね。ずっとヒゲダンとVaundyとAdoと藤井風とMrs. GREEN APPLEとYOASOBIがただただ入れ替わっているランキング。つまり新風が吹きにくい。新人が売れにくい世界。新風よりも安心・安定を求める国民性だとすると、「これが指標です」っていう意味でのランキングは非常に堅固で強いものになってしまう。で、「音楽が好き」の一定のなにかを超えると、ランキング系のものはなんとも思わなくなるっていう。ランキングって所詮は入門編だから。「優しいは正義」の目に見えた形で、「ランキングを作ってあげた」という優しい行為はちゃんとなにかをダメにしていると思うんだよね。1位が発表された時点で興味が終わっちゃうから。