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サムオブ井戸端話 #052「サムオブ振り返り(中編)~駆け抜ける画と疾走感ピアノサウンド~」

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

「サムオブ井戸端話」が2年目に入ったので、この1年の印象に残った記事を振り返ることに。中編ではこのブログで1番バズった「アニソンは何故、疾走感ロックサウンドになりがちなのか?」という話から、”4つ打ちロックと泣きっぽいメロとピアノサウンド”と”制服を着た子の駆け抜ける画”が何故セットになるのかという話をしました。前編は下記リンクから。

 

カンノ:この「サムオブ井戸端話」のエポックメイキング回はYOU-SUCKメンバーの「アニメ音楽はなぜ疾走感ロックサウンドになってしまうのか問題」回じゃないでしょうか?

カンノ:この話をしたあとに『映画大好きポンポさん』観に行きましたよ。

YOU:どうだった?

カンノ:いやもう、YOU-SUCKメンバーがおっしゃっていたとおりでした(笑)その言われた角度で映画を観たんだけど、本当にそう思ったよ。

YOU:そうだよね。映画内で撮っている映画とBGMが合ってないんだよ。いや、内容はすごく良い映画なんですよ。アニメとか声優が好きな人に向けて、クリエイターの苦労と喜びを丁寧に描いているから。ただあのBGMのエモエモな感じとは違う気がするんだよなぁ。

YOU:あとアニソンって好き嫌いの軸でしか語られないし、もったいないよね。ロックとか渋谷系とかで生き残っている人ってアニソンに携わっている人は多いじゃん。だからバンドサウンドが未だに活き活きしているのはアニソン界隈だなと思ったりするんですよ。バンドサウンドでいうと、アニメ『平家物語』のオープニングで羊文学の「光るとき」が使われてて。

YOU:羊文学には「光るとき」だけじゃなくてメロディアスでキャッチーな曲が多いけれど、それでもオルタナグランジにルーツを持つ曲がアニメのオープニングで流れるっていうのはあまりなかった気がしていて。それに加えてあの歌は単体ですごく良い曲で、歌詞もアニメの人間讃歌的なテーマにも沿ってるし。でもそれはレアケースで、基本はアニソンフェスとかで半永久的にアニソン的なロックが再生産され続けるだけなんだろうなという気はしちゃうかな。で、俺はアニメのことはあまり知らないからあんまり批評的なことを言う気もなかったんだけど、記事をアップしたら「そう感じてました」っていう人も多くて驚きました。だから逆にアニメやアニソンが好きで、アニソンの現場にめちゃくちゃ行ってる人から、あのアップした記事とかアニソンのロックが多いことについてどう思うのかは聞きたかったかな。そこにリーチできたらより面白くなれた気がしたかな。

カンノ:たとえばその記事のなかでいうと、「その源流にはBUMP OF CHICKENがいる」みたいな話とかをしたじゃない。記事ではそこまでだけだったけど、もっと探れるよね。たとえばバンプとフラッシュ動画で出会った層もいるわけじゃない。そういうところから今のボカロPと結びつくなにかがあるかもしれないよね。だから「インターネットで音楽やってます」みたいな人でも音像はロックサウンドになっていたりさ。もちろんたくさんの人に聴かれたいだろうからキャッチーではあるべきなんだけど、なんでキャッチーというものが疾走感あふれるロックサウンドになったり、疾走感あふれるピアノサウンドになったりするんだろうね?もう型になったじゃん。

YOU:そうだね。疾走感があってピアノがあって。前から言ってるけどゲスの極み乙女やYOASOBIのピアノの音って強いじゃん。あれってどこが始まりなんだろうね?

YOU:多分クラシックやジャズじゃないでしょ。ポップスでもあの音はどこが源流なんだろうね?でも気づいたらああいう曲まみれになっていた気がする。

カンノ:ゼロ年代だとろ誰だろうね?たまにフジファブリックではそういう曲はあったけど。

YOU:フジファブリックはオルガンにもなったりするから、そこは難しいよね。

カンノ:「陽炎」とかはそういうピアノの音だと思うんだけど。

オノウエ:やっぱり一番はSUEMITSU & THE SUEMITHじゃないかな?

カンノ・YOU:うわぁ~(笑)

YOU:SUEMITSU & THE SUEMITHが犯人か(笑)あと関ジャムの話になっちゃうけどさ、椎名林檎が異様にランキングに入ってたじゃん。

YOU:たとえば「丸ノ内サディスティック」はどうだろう?原曲はギターレスだし。

カンノ:椎名林檎、なるほどね。aikoとかは?

オノウエ:いや、ちょっと違うと思うんだよね。シンガーソングライターの話じゃないと思うんだよ。ようは4つ打ち系ロックと泣きっぽいメロとピアノがくっついた途端にダサくなるという話じゃないかな。

YOU:あぁ~(笑)

オノウエ:そういう方法論だけ持ってこられてくっつけられたらダサいと僕らは感じちゃうという話だと思うんだけど、それがかっこいいという評価になっているんだと思う。それらをすべて最初にくっつけたのは誰なのか?

カンノ:ゲスの前は誰なのか?

オノウエ:神聖かまってちゃんとかは感じたかも。

YOU:たしかにね。ピアノがうまいわけじゃないけどエモさは強いっていうポイントはあるね。

オノウエ:最初にかまってちゃんを聴いて「なんでピアノがいるんだ?」って思ったもんな。

YOU:また別の人が語ってほしいね。「なぜピアノの音と駆け抜ける画がセットになるのか?」って。

オノウエ:「なぜ駆け抜ける画の人は制服を着ているのか?」

カンノ:「制服」の情報は大きいよね。それで疾走感あふれるバンドサウンドを流してみなさいよ。「高校の同級生のバンドが~」みたいな物語が組み込まれますよ(笑)「仲が良い」というアイデンティティを形成しますから。

YOU:俺は制服は有限性の象徴だと思っていて。「高校3年間」とか「中学の3年間」とかさ。

カンノ:ポカリスエットのCMとかね。

オノウエ:それこそあのCMは有限性の話だよね。「限られたこの期間を駆け抜けろ!」

YOU:「命を燃やせ!」

カンノ:あと04 Limited Sazabysの曲に合わせて制服を着た人たちがコマ撮りで撮られたカロリーメイトのCMもあったな。フォーリミと制服の有限性の親和性は高いよ。

YOU:本当に若者を走らせたがるよね。なんだろ、日本人は若者になにかを課すのが好きなんだろうね。

カンノ:10代がバンドやってたり高校野球やってたりするのは大人は好きなんだよね。

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