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選曲家としての爆笑問題 〜自分語りディスクジョッキー〜

様々なライブやレコーディングに参加しているミュージシャン・三浦千明さん屁理屈音楽語りグループのLL教室・ハシノさんをお招きして、SOMEOFTHEM・カンノと「音楽ラジオ」についての駄話会。第7回は時代背景込みで選曲が出来るディスクジョッキーとしての爆笑問題と、熱血ディスクジョッキーとしての太田光ダイノジ大谷ノブ彦の話。

 

 

 

カンノ:芸人さんのラジオの話もしましょうか。僕は『爆笑問題カーボーイ』で好きな回があって。それは太田さんが芸能史を私感で語る回なんですよね。

ハシノ:あぁ〜、良いよね!

カンノ:例えばさくらももこが亡くなったときの葬式の話から、桑田佳祐の話に繋がったり。それって太田さんから見た芸能史の話だから、「今、貴重なこと聞いてる」って気持ちになるんですよね。変な話、『カーボーイ』って誰かが亡くなったときが聞き時なんですよね(笑)多分、太田さんの口調が優しくなるときがすごく好きなんですよね(笑)

ハシノ:アハハハハッ!

三浦:本気のときの太田さんね(笑)

カンノ:太田さんが”良い奴”になったときの『カーボーイ』がめっちゃ好きなんですよね(笑)

ハシノ:そして、そのときは田中さんは混ぜ返さないよね(笑)

カンノ:太田さんの一人語りに「うんうん」しか言わない田中さんも好き(笑)太田さんから出てる「邪魔すんなよ」感とかも良いんですよね(笑)で、最後に照れ隠し的にボケる太田さんも推せる(笑)「これが締めだな」って感じで。

ハシノ:思い出したかのように声を荒げる太田さんね(笑)

カンノ:本当可愛い人ですよね(笑)今、桑田さんに文句言えるような人っていないじゃないですか。そんな中、『カーボーイ』で『ひとり紅白』の話をされていて。桑田さんが歌謡曲をいっぱい歌ってたのかな。それに対して太田さんが「桑田さんの歌う歌謡曲はすごく良いんだけど、あなたが歌謡曲を殺したんだからね!」みたいなことを歯向かって言ってて。これって太田さんしか出来ないなって。それを実際に桑田さんにメールで送ってみたいな話だったと思うんですけど。「こんな話、聞けないよ」って思ったりね。

三浦:思ったことは言わずにはいられないんだろうね。

カンノ:それって太田さんもだけど、田中さんもっていう(笑)ツッコミ故にたちが悪い(笑)

三浦:酷いとき、めちゃくちゃ酷いよねぇ(笑)

 

カンノ:『カーボーイ』って選曲の妙はありますよね。

三浦・ハシノ:あるねぇ〜。

カンノ:たとえそれがTBSラジオの事情だったとしても、2人は全然語れますもんね。はっぴぃえんどか大滝詠一かのボックスセットの販売で、その中から曲をかけるときも太田さんは5分ぐらい喋ってましたもん。そして田中さんも喋れるし。

三浦:あの2人、めちゃくちゃ音楽語れるんだよね。

カンノ:むしろ田中さんの方がラジオ日本寄りですよね。歌謡曲やアイドルみたいな方向って。

三浦:アイドルは強いし、サザンも佐野元春も強いですよ。しかもあの2人は、ちゃんと映画とかドラマとか、その時代背景の文化も込みで話してくれる。

カンノ:文脈ありきですよね。

ハシノ:その時代の日芸の教養だよね。

三浦:本当にそれは聞いてて憧れる世界だよね。

カンノ:かっこいいですよね。なんか、選曲家としての爆笑問題って誰も喋ってないですよね。

三浦:『爆笑問題 日曜サンデー』で、たまにオールリクエストをやる回があって。そこで爆笑問題の2人が勝手にランキングをするの。で、それが何のランキングかを考えて、1位は何かを当てるクイズをやってて。

カンノ:それ、普通に友達同士でやって面白そうですね。

三浦:覚えているのが、成人の日にそれぞれが成人したときのリクエストとか。何かの日に合わせたリクエストって結構あって。それを爆笑問題の2人が個人的なランキングを作るの。「◯歳」縛りも多かったかな。それでそれぞれの思い出の曲をかけるみたいな。それが思い出話と、音楽の文脈とが両方語られるから、結局音楽番組として聞けるんだよね。

カンノ:なるほどなぁ。

三浦:爆笑問題の番組ってどうしたってお笑い番組の認識になっちゃうからね。音楽に造詣が深いってそこまで思われてないよね。

カンノ:やっぱりね、『カーボーイ』のネタメールが面白すぎるところに問題がありますね(笑)

三浦:関取花ちゃんがよく取り上げられてたけど、最初は田中さんが「めっちゃ良い曲なんだよ!」って言ってかけ始めたのがきっかけなんだよ。

カンノ:あぁ、田中さん経由なんだ。

三浦:そこから太田さんも気に入って、新曲出るたびにかけるようになって、スタジオに呼ばれるようになるっていう。あと、この前の『日曜サンデー』でのリクエスト回で、「夏を感じる曲ベスト10」だったかな。その太田さんの1位が四国のシンガーソングライターの女の子だったの。「誰これ?」ってスタジオ全員がなるっていう。

ハシノ:どういうアンテナなんだよ(笑)

三浦:「適当に聴いてたら、めちゃくちゃ良い曲だったんだよ」とか言って(笑)で、次の次の週だったか、イベントでその女の子呼んで。でも全員が「ぽか〜ん」っていう(笑)

カンノ:太田さんってずっと荒削りだけどディスクジョッキーなんですね(笑)めちゃくちゃ上手くないけど(笑)客は「ぽか〜ん」なんだし。

ハシノ:アンテナはすごいけど、そこに信頼度はないっていうね(笑)

カンノ;ただ、そこは「太田さんだなぁ〜」って思う感じ。

三浦:4時間番組の1位で「ぽか〜ん」だからね(笑)「誰?」っていう(笑)

 

カンノ:僕がラジオを好きになったのって社会人1年目の頃なんですよ。結構最近で。で、何の番組かというと、『ダイノジ大谷ノブ彦オールナイトニッポン』(※1)なんですよ。僕、本当に、「いつ死のうかなぁ〜」と思ってるときにずっと聞いてて(笑)

ハシノ:良いじゃないですか〜(笑)

カンノ:その中で印象に残ってるのが、大谷さんがタカアンドトシの話をしてて。「タカさんが悪魔に魂を売った」的な話で。タカさんって最初はめちゃくちゃシュッとしてて、ピアスも開けてたりして、すごく怖かったんですよね。パンクファッションとかしてたり。で、あのキャラクターのセーターを着て、ブクブク太ってから売れたって話をしていて。怖さを中和するための太るって行為は手っ取り早いんですよね。

第6回 ダイノジ大谷ノブ彦のオールナイトニッポン:ダイノジ大谷のオールナイトニッポン 毎週水曜 25:00〜27:00


三浦・ハシノ:なるほどね。

カンノ:太ることによって明るいキャラクターになることを、大谷さんは「悪魔に魂を売る」みたいな表現をされてたと思うんです。まともな自分を捨てて、醜い姿になることで芸能界を勝っていくみたいな。

ハシノ:着ぐるみを着る感じね。

カンノ:もうそこに”自分のため”みたいな気持ちはなくて。しかもそんな見てくれになって。それを「地獄の底から這い上がる」みたいな歌詞を引用して、星野源「化物」を紹介するんです。僕、それでガン泣きです(笑)その頃、自分の応援歌として何年間か聴いてましたね。今回、「音楽ラジオ」をテーマに取り上げる際に、このことはやっぱり個人的体験として思い出すんですよね。その後、星野源は病気で倒れて、さっきの話のもっと直接的な「地獄でなぜ悪い」という曲も出しますが。

ハシノ:大谷さんってうっとりできる人だから、それってやっぱりラジオ向きだよね。なにか曲があったら、それを材料にいくらでも膨らませられるというか。

カンノ:それこそ太田さんもそうな気がしますね。でもこれが難しいのが、この感じって芸人からするとダサいみたいな気持ちもあるじゃないですか。

ハシノ:そうね。「芸人がうっとりしやがって」的なね。

カンノ:でもまたちょっと時代が変わって、芸人がちゃんと本音を話すことが良しとされてる時代になってきた気もしていて。表と裏がなくなってきたというか。ほかのその世代の芸人のラジオって、「本当の本当は言わない」みたいなことが美学な感じもあるじゃないですか。

ハシノ:あ〜、なるほどね。

カンノ:この場の最大公約数的な言葉の選び方というか。でも太田さんや大谷さんってそこは度外視な気はするんですよね。それって僕は結構信用できるんですよね。なのでそこは芸人というよりは表現者の人のラジオとして聞いてる節はあるかもしれないんですけど。ディスクジョッキーとしては粗いかもしれないですが(笑)

ハシノ:音楽を触媒としてなにかを喋るというときに、その曲についての情報を言うか、その曲に関連した自分のことを言うのかのどっちかだと思うのね。で、先程の2人は自分を言う側のディスクジョッキーだよね。

カンノ:熱血ディスクジョッキーですよね。

ハシノ:どっちもアリだよね。

カンノ:それはもうリスナーの心情次第ですよね。

ハシノ:それが鼻についたらおしまいだし。

カンノ:もちろん、滔々と情報を流すディスクジョッキーに対しての鼻につくもありますからね。

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(※1)2013年4月3日から2014年3月26日まで放送されていたラジオ番組。「洋楽で世界を変える」をコンセプトに、音楽をはじめお笑い、映画、生き様、苦労話などを大谷が熱を持って語る様がカルト的人気を誇った。ゲストの東野幸治曰く、「こんなに信者の少ない宗教団体はない」