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うっかり音楽と出会うためのラジオ 〜vsサブスクリプション〜

様々なライブやレコーディングに参加しているミュージシャン・三浦千明さん屁理屈音楽語りグループのLL教室・ハシノさんをお招きして、SOMEOFTHEM・カンノと「音楽ラジオ」についての駄話会。第6回はうっかり音楽と出会うためのラジオと、サブスクリプションは見知った音楽としか基本出会えないという話。

 

 

カンノ:千明さんがパッと思いつく好きな番組はなんですか?

三浦:音楽ラジオの観点で言うと、『タブレット純 音楽の黄金時代』(※1)ですね。60〜70年代の歌謡曲をかける番組なんだけど。もちろん歌手もフィーチャーするんだけど、アレンジャーや作曲者もフィーチャーして選曲してくれるのね。そこに時代背景も込みで紹介してくれるのが面白いかな。

カンノ:やっぱりラジオ日本なんですね。

三浦:サブスクでは聴けないからね。一番貴重ですよ。CD屋にも売ってないし。そもそもCDにもなってなかったりするし。だからレコードからCDになっていく時代の、その前の時代に戻った感じがするよね。それこそ今、SMAPの曲なんて聴けるのはラジオしかないよ。

カンノ:本当、そうなっちゃいましたね。

三浦:CD屋にも全タイトル置いてるわけじゃないし。ブックオフで買うか、ラジオでリクエストするかですよ。だから時々、ラジオでSMAPが流れると「やった」って思うよね。

カンノ:棚からSMAPですね(笑)

三浦:嵐はやっとサブスク解禁されたけどね。まぁ、サブスクあるからなんでも聴ける時代っぽいけど、なんでも聴けない時代というのも実はあって。

A・RA・SHI - Single

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ハシノ:ちょっとラジオからは離れるけど、TSUTAYAレンタルCDって普通に考えて行く用事がないじゃん。全部サブスクにあるから。今、普通に売れてる順にCDが並んでるけど、あれサブスクにないやつに特化したらさ…。

三浦:めちゃくちゃいい!例えば、90年代後半の…。

ハシノ:インディーズで!もうレーベルも倒産してて。

カンノ:そっか、そうなると配信は無理か。

三浦:メジャーもそうだよ。メジャーで廃盤になってたらサブスク無理だよ。だから大切にCDは取ってある。「もうこれはCDでしか聴けない」と思うとね。

カンノ:サブスクが出てきて、廃盤という概念がなくなったかと思いきや、全然強固になってるケースもあるってことですよね。Syrup 16gの『Free Throw』、廃盤で高くて高校生のころ買えなかったのに、解禁されたんだ」みたいなこととかありつつ(笑)、忘れさられたものは本当に廃盤になっていくという。

Free Throw

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三浦:電気グルーヴが聴けないのもそうだしね。

カンノ:結局今享受している自由は、会社の都合で止められる可能性がある自由ですもんね。

三浦:「なんでもある」かと思いきや、「なんにもなくなる」可能性があることが分かったよね。

ハシノ:まだフィジカルがあればね。それを持っている人が何十万人といるわけだから。それが全部ストリーミングになっちゃうと、誰かが止めたら誰も聴けなくなるからね。

三浦:それでいうと、ラジオにはどんな曲でもあるんだよね。リクエストが通れば流れるから。

 

カンノ:サブスクの話が出ましたが、どうやら千明さん、素晴らしいプレイリストを見つけたらしいじゃないですか(笑)

三浦:ついに、最高のプレイリストを見つけてしまいました(笑)Apple Musicなんですが、「ShazamディスカバリーTop50」です!

カンノ:アハハハハッ!

ハシノ:なるほどなぁ〜!これは面白い!

三浦:これですよ!これはリクエストじゃないんですよ。これって、「なんだろう?」と思ってShazamしてるわけだから。

カンノ:これ、人間の無意識の集合体じゃないですか!

三浦・ハシノ:そうそう!

ハシノ:誰もコントロールできないよね。

三浦:分かんないんだよね。世界中だから、国もどこか分からないの(笑)

カンノ:世界かぁ〜(笑)

(注:調べたら日本でShazamされたランキングを紹介するHPは存在しました。各国のものも見ることができます)

三浦:次の曲で、何の曲とか何語とか歌モノかインストかとかも全然分からなくて。

ハシノ:おもしれ〜!

三浦:「多くの人が気になった」という観点だけだから。

カンノ:人種、国籍全く関係ないっていうね。まぁ、人口の絶対数はあるからあれですけど。これって人類が気になったベスト50ですからね。

ハシノ:すごいよね〜。

三浦:お金かけた宣伝とかじゃないからね。気になったという観点だから、みんなが知ってる曲は入ってこないのよ。曲を知ってたらShazamしないからさ。

カンノ:本当に無意識の集合体だ!

三浦:ヒット寸前の曲たちだよね。ここからすごく売れる曲が出てくるかもしれない。この時点では、知らないからShazamをするわけで。これは本当に聴きがいがあるよ。

ハシノ:時代も新しいかどうかは関係ないもんね。

三浦:でもなにかで流れて、気になってShazamするわけだから。

カンノ:マジのビッグデータですもんね。

ハシノ:まさに。

カンノ:この分野でいうとShazamは独占企業ですからね(笑)いやぁ、ラジオ日本でこのランキング番組やってくれないかな。「Shazam Top10」とか(笑)

三浦:やってほしい!

カンノ:ただこのランキングを分析して語れる人はまだいないか(笑)やっぱり音楽の切り口って大事ですよね。本当面白いなぁ。なんでもある。

ハシノ:この切り口は完全に新しいよね。

三浦:私は音楽とうっかり出会いたくてラジオを聞いてるのね。これは新しいうっかりですよ(笑)

カンノ:これはうっかりだなぁ(笑)以前ハシノさんもブログで書かれてましたが、実はサブスクってうっかり出会う装置として機能しないじゃないですか。

三浦:自分で探せるとなると、自分が聴きたい曲を探すことになっちゃうからね。Youtubeもだけどさ。自分が過去に出会ったものとしか出会えないからさ。そこで新しい刺激をもらうって結構難しいことだよね。

カンノ:ディグができないんですよね。

ハシノ:「これが好きなら、あれも好きでしょ?」ぐらいなもんだよね。

カンノ:僕の下の世代になるとディグっていう概念がないんですよね。見たいものが見れる世代になるから。

ハシノ:そうよね。

三浦:「見たい」という欲求って、もう情報を持っちゃってる人だよね。「見たい」があると、「わぁ!」っていう驚きがないんだよね。「まぁ、見たかったやつだし」ってなるというか。「何これ!?」っていう驚きの出会いがしたいんだよね。

カンノ:ずっと好きな音楽って、最初の出会いはそういうことだったりすると思うんですよね。100%好きというよりは、どこか違和感を伴って聴いた音楽がずっと残っていたりするんですよね。で、色々知っちゃうとそういった驚きもなくなるんです。「もう音楽に対する新鮮さも天井かな?」と思っていたときにのShazamプレイリストはかなり救いですよ(笑)でもそれって千明さんにいろいろ教えてもらったラジオ番組も同様で。「あ、こんな昔の時代にもかっこいい音楽ってあったんだ」って。やっぱり出会い方がなかったんですよね。

ハシノ:でも難しいのが、radikoのタイムフリーもそこは良し悪しだよね。

カンノ:もちろんそうですね。うっかりではないですからね。サブスクと似てると思います。

ハシノ:「今、時間空いてます。今、やっている何の番組聞きます?」という状態で聞くって大事だったじゃん。それがもう「タイムフリーで(伊集院光 深夜の)馬鹿力聞こう」ってなっちゃうじゃん。

カンノ:ですよね。それなのに「今、聞くものねえや」とか言ってるんですよ(笑)こんなに無数にあるのに!今喋ってて思い出したんですけど、僕たまに実家帰ったときに、ちゃんと車で運転しながらカーラジオを聞く習慣があるんですよ(笑)

ハシノ:アハハハハッ!

三浦:いいね、いいね(笑)

ハシノ:それ、大事だよ〜(笑)

カンノ:ですよね(笑)それはやるようにしていて。で、この前車の中で福山雅治のラジオを聞いてたんですよ。多分タイムフリーで聞く福山のラジオって特にそんな面白くは感じないんですよ。でも、土曜のお昼2時に車の中にいなきゃいけなくて、「もうTokyo FMの『福山雅治 福のラジオ』を聞くしかない!」という状況下で聞く福山のラジオはすごく面白いんですよ(笑)これは不思議ですね。うっかり聞く福山ラジオの面白さ。

ハシノ:そうだね。車でリアルタイムでラジオを聞くって『爆笑問題 日曜サンデー』か『ナイツのちゃきちゃき大放送』になっちゃうもんな。それ以外の事故的に聞くラジオってないなぁ。これ、良くないなぁ…。

三浦・カンノ:アハハハハッ!

カンノ:良くないってことはないですよ(笑)良くないのはこちら側ですから(笑)

三浦:こっち側は病気だから(笑)

カンノ:でもやっぱりその感じは感動しましたね。「福山、おもしれ〜」みたいなのは。

三浦:なんだかんだ言って面白いんだよね。

 

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(※1)ラジオ日本で毎週土曜17:55〜20:00まで放送される音楽番組。60~70年代、音楽の黄金時代のグループサウンズフォークソング、ムード歌謡など当時全盛を誇った昭和歌謡曲からタブレット純が選曲し、放送。リクエストも募る。そこにタブレット純による似てないモノマネがたまに挟み込まれる。