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”そういう体”の番組が多いTOKYO FM 〜『シンクロのシティ』最終回感想戦〜

様々なライブやレコーディングに参加しているミュージシャン・三浦千明さん屁理屈音楽語りグループのLL教室・ハシノさんをお招きして、SOMEOFTHEM・カンノと「音楽ラジオ」についての駄話会。第3回は”そういう体”の番組が多い、TOKYO FMについての話。後半は三浦さん、カンノによる『シンクロのシティ』最終回、大感想戦

 

 

 

カンノ:他に何か聞いちゃうラジオってありますか?

三浦:気軽に聞ける音楽ラジオはやっぱ『JET STREAM』(※1)かなぁ。いつ聞いても、いつ寝ても大丈夫(笑)あの番組ってどこかの国へ旅行に行く体でやるから、それに合わせた曲がかかるんだよね。

カンノ:TOKYO FMって”そういう体”の番組がかなり多いですよね。ラジオドラマなのか、インタビュー番組なのかみたいな。

三浦:『ピートのふしぎなガレージ』(※2)ね。

三浦:その前が『AVANTI』(※3)っていう番組だったんだけど、ジェイクさんっていうバーテンダーの人がいて、この人は実際は様々なミュージシャンのサポートでサックスを吹いていたスーパースタジオミュージシャンなんだけど、ちょっと片言の日本語で面白い感じだったの。で、お客さんが来て、「ちょっと聞き耳立ててみましょう」みたいな感じで番組が始まるっていう。『ピート』と作ってる人が一緒だったかな。

カンノ:そういう番組多いですよね。『シンクロのシティ』(※4)も、普通ラジオ番組ってその番組のファンの人が声を寄せるじゃないですか。あの番組は無差別に声を録ってくるんですよね。

三浦:リスナーじゃない人の意見を持ってくるよね。

カンノ:あんまりラジオでそれはないですよね。テレビはカメラがあるから分かりやすいけど、ラジオって微妙じゃないですか。ボイスレコーダーしかないから。

ハシノ:常連に囲い込まれている安心感ってあるよね。良くも悪くもラジオって話の分かる人しかいないというか。

カンノ:数は少ないが関係は強い人がいるって感じですよね。TOKYO FMって他局ではあんまり見ないような構成の番組が多いような気がします。

三浦:『安部礼司』(※5)とかもそうだよね。

三浦:ああいうラジオドラマの中で曲がかかると、聴こえ方が変わるよね。DJが曲を説明しながらで聴こえ方が変わるみたいなものとは全然違う聴こえ方があって。急に泣けてきたりとか。毎回エンディングテーマが違うみたいな感じで。すごい嫌いだった曲も良く聴こえるときがあるよ。

カンノ:それってやってることはディスクジョッキーですよね。

三浦:「このストーリーの最後でこれかかるのか、うわぁ〜!」みたいな。ちゃんと思いが込められて作られてるから、「あれ、実は良い曲だったのかもしれない」みたいなね。

ハシノ:あんた、ラジオ好きだね〜(笑)

三浦・カンノ:アハハッ!

カンノ:ラジオ国に行きたいんですよね?

三浦:そう、ラジオ国に税金払いたい(笑)

 

カンノ:それこそ『シンクロのシティ』最終回で、プロデューサーの人が喋ってたのが、昼3時〜5時の時間帯で海外のトレンドを押さえた曲をかけようとしてたって言われてて。で、今の海外の流行りをかけようとすると暗い曲ばっかになるっていう。それを、平日昼間の時間にどういう意味合いでかけたらいいのかというところが苦労したって話されてて、「ここまで喋るんだ」って聞きながら思いましたね。最後っ屁だなって。最終回は仕組みまで喋ってましたね。あの時間帯の番組って本来ならなんとなくの聴こえのいい曲をかけるじゃないですか。でもそうじゃないっていう。

三浦:たしかに上手だったね。パーソナリティの堀内さんの間奏部分の一言とか気が利いてたもんね。

カンノ:堀内さんは暗いことは言わないんですよね。バランスが良かったなって。明るい曲に明るいことを言うトゥーマッチ感もなかったし。

三浦:「街角プレイリスト」もよかったしな。街の人にリクエストとエピソードを聞くっていう。

カンノ:これも無差別ですね。リクエストの意志のある人とはまた全然違うベクトルですよね。

三浦:「今朝聴いたから」という理由でリクエストしたりね(笑)

ハシノ:『ビー10』とは真逆のベクトルだ(笑)

 

三浦:『シンクロ』の最終回でTOKYO FMの編成の人が、「クチロロの『Tokyo』聴いてシンクロをやろうと思った」って言っててね。

Tokyo

Tokyo

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カンノ:そうでしたね。クチロロの「Tokyo」という曲が9年間ずっとオープニングで使われてたんですよ。シンクロの最終回がスタッフ全員を出すってもので、そのラストに堀内さんをラジオの世界へ引っ張った編成の人が来て喋っていたんですが。そのクチロロの「Tokyo」を聴いて、「TOKYO FMのテーマソングにしたい」って言ってたんですよね。で、使い所どうしようかなってときに堀内さんと番組をやることになってという。

三浦:番組の設定自体がその曲をモチーフにしたものになっているという。

ハシノ:へぇ〜!

カンノ:「人は出会って別れる」みたいな歌詞とかね。

三浦:その世界観の番組だったよね。

カンノ:東京という街で一瞬出会った人の声を録るというのがね。で、すぐ別れてね。もうその人とは二度と会うことはないかもしれないけど、声を録ったという事実はあるわけですよね。なんてドラマチックなインタビュー番組なんだ…(笑)

三浦:曲先行の番組ってすごいよね。

カンノ:最終回は番組の仕組みを全部喋ってましたね。

三浦:成り立ちからね。刹那的な面が大きかったからね、あの番組は。「東京に住んでる人っているよね」って番組でね。ずっと住んでる人もいれば地方から出てきた人、でも両方とも東京の人なんだよね。

カンノ:もちろん海外からの人もいるし。

三浦:その日、その瞬間東京にいたら「東京の人」なんだよね。

カンノ:でもそんな番組、本当に心根がいい人じゃないとできないですよね。ちょっとでも意地の悪さがあったら務まらないというか。だから堀内さんってちょっと怖いですよね(笑)『シンクロ』が好きな人は周りにも多かったです。

三浦:『シンクロ』って平日の昼3〜5時だから、自営業の人か社会人ができなかったまともじゃない人しか聞けないんだよね(笑)

カンノ:僕は営業車の中で仕事をサボって聞いてました(笑)

三浦:まともじゃない〜(笑)

 

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(※1)1967年から放送されているイージーリスニング番組。パーソナリティを機長に見立てて、「異国情緒溢れる音楽と情感たっぷりのナレーションで、海外旅行の魅力をリスナーに伝える」ことをコンセプトとしている。現在の機長は俳優の大沢たかお

(※2)2013年から放送されている、ラジオドラマとトークが組み合わさった形の番組。とある洋館にひょんなことから足を踏み入れた主人公が、そこで出会ったエヌ博士に翻弄されつつも様々なことを学んでいく。前番組『AVANTI』の手掛けたスタッフも関わっている。

(※3)正式タイトルは『SUNTORY SATURDAY WAITING BAR AVANTI1992年から2013年までに放送されていたラジオ番組。バーで繰り広げられる客同士の会話を常連客の紳士と一緒に聞き耳を立てるというもの。この後継番組が『ピートとふしぎなガレージ』に当たる。

(※4)2010年4月から2019年9月まで放送されていたラジオ番組。「東京の声とシンクロする」をコンセプトに、事前収録の街の声と生放送中に届くリスナーのメッセージを織り交ぜながら、その日のテーマについて深堀りしていく。2015年9月に番組終了が伝えられたが、番組存続を願うメッセージが多く届けられ継続が決定。番組終了の撤回はTOKYO FMの歴史上異例のことであった。

(※5)正式タイトルは『NISSAN あ、安部礼司〜BEYOND THE AVERAGE』2006年から現在も放送されるラジオドラマ番組。平均的な男性会社員・安部礼司の会社内外でのストーリーを中心に展開される。イベントも多数打たれている。総合プロデューサーに『シンクロのシティ』の堀内貴之、脚本に『Skyrocket Company』のマンボウやしろが関わっている。