宅録ユニット・OK?NO!!の上野翔とカンノアキオでSpotifyで聴けるポッドキャスト番組『Radio OK?NO!!』を配信しています。こちらではその文字起こしを前編、後編に分けて掲載します。今回は令和と平成の「エモい」と言われる楽曲の違いを考える「令和のエモ、平成のエモ」特集の文字起こし(後編)を掲載します。(前編)は下記リンクから。
Radio OK?NO!! Podcast #023「令和のエモ、平成のエモ」特集音声は下記リンクから。ポッドキャスト登録を是非、よろしくお願いします!
カンノ:じゃあ続いての令和エモ曲を紹介します。あのね、おじさんなんて出て来ないんだよ!
上野:そっか…
カンノ:「おじさん」と「エモ」って今、一番離れてるんだよ!
上野:そうなの!?
カンノ:そうなんだよ!もうちょっと今のエモにはアーバンさが入ってくるから。
上野:アーバンとエモ…?
カンノ:しかも今はラップでもエモいって言われてるんだから。なので次はラップ楽曲でのエモ曲を聴いてもらえたらと思います、空音で「Hug feat. kojikoji」
カンノ:エモ~い!
上野:これはエモくないですね。
カンノ:アハハハハッ!曲を流してるときに「これはエモじゃない」って顔をしかめて言ってたね(笑)
上野:これは「オシャレ」だと思います(笑)
カンノ:でもそうなんだよ。オシャレだなと思って心が動くじゃん。それがエモになってるんだよ。曲のなかに特徴的な部分があるじゃん。「オシャレだな~」もそうだし、たとえばサビで「ってかLOVEで満たそうよ今夜」ってあるの。「ってか」という日常会話用語みたいなものが歌詞に入ってくる特殊性に心が揺れてエモくなることはあるんだよ。
上野:そうなのか~。
カンノ:平成のときのエモって確固たる意味があったと思うんだよ。それが薄まって広がった結果、こういうことにつながってるのではないか。あとサビのkojikojiさんのハスキーボイス、それにともなうアンニュイさみたいなことと、空音さんによるちょっとテンション高めのラップ、その2人の声が重なるところもエモい要素ということになっているのかなと思います。
上野:なるほどね~。平成サイドとしては、エモって日常と地続きな感じがするんですよ。でも令和のエモは非日常が入ってくるのかと思いました。
カンノ:この曲でいうと、基本的にはファンタジー情景を歌ってるんだよね。そういうものが音楽に例えられてるんだよね、比喩表現として。だから「この比喩、エモい」にもつながてくるという。なんでも「エモい」という言葉に結びつかれていく流れはあるよね。
上野:この曲のMVさ、クラブみたいなところでのパーティーじゃん。
カンノ:パーティーもエモいんだよ。
上野:うわ~。なるほどね。
カンノ:だから平成のエモってロックフェスで感じるものだったじゃん。それが小さいクラブやコミュニティでも感じられるんだよね。そういう意味合いが広がっていった歴史だよね、エモって。
上野:う~ん、やっぱり納得できないですね。
カンノ:アハハハハッ!納得できないならお前が思うエモ曲を聴かせてくださいよ。
上野:平成サイドのエモとしては、「汗」と「顔」です!それではお聴きください、NUMBER GIRLで「透明少女」
カンノ:違うじゃん!
上野:アハハハハッ!
カンノ:まず音が悪い!何言ってるかわからねえ!これあれだろ、東京のレコーディングをボツにして福岡でレコーディングしなおしたやつだろ!
上野:お前、詳しいな!
カンノ:「地元で録ったほうがいい」みたいなことをボーカル&ギターの人がワンマンでやったんだろ!
上野:さてはお前、大好きだな!
カンノ:あ~、復活したあとのライブ行きてえな~!行ってエモくなりて~!
上野:思い出してきたね(笑)
カンノ:中学生のころ、擦り切れるまで聴いたからね。
上野:そうだよな。映像も擦り切れるまで見たもんな(笑)
カンノ:何度も見たよ!
上野:僕らはNUMBER GIRLのファンで、「透明少女」は本当に好きだから思い入れも強いんですが、それを差っ引いたとしても、平成で言われていたエモのエッセンスがこの曲には詰まってると思うんです。
カンノ:平成って疾走感がほぼエモと同義語だったよね。
上野:そうだったね。あと音が汚いとかさ、何言ってるかわからないのも、エモの要素だったよね。
カンノ:あと初期衝動とかね。初期衝動がエモと直結していたのが平成で、令和は初期衝動とかは関係なく自分で作れちゃうもんね。衝動とかじゃない。あともう今は音が悪いものは音楽として聴かれないでしょ。全部音が良いから。でも今の人が逆にカセットテープとかで音楽を聴くのとかは「エモい」になるんだよ。
上野:「逆にエモい」ね(笑)
カンノ:イースタンユースとかも「なにこの劇画みたいな人!逆にエモい!」みたいな(笑)
上野:「タモリじゃん、ウケる~」の世界だ(笑)
カンノ:アハハハハッ!
カンノ:では令和エモの3曲目、バンドいきましょうか。僕が今年、一番推しているバンドです。これもTikTokで「エモい」と言われてました。エモいの一点突破でメジャーデビューしていったバンドの曲を聴いていただきましょう、オレンジスパイニクラブで「キンモクセイ」
上野:あなたが大好きな曲ですね。
カンノ:はい、エモです。
上野:「きゅんです」みたいに言うなよ(笑)
カンノ:ほぼ同義語だと思うんだけどね。この曲も歌詞の情景描写ですよね。「坂道の途中でぶちまけたサイダー」みたいな、誰も経験してないけど想像つくやつあるじゃん(笑)「信号のない十字路」とかも、みんなそれぞれ絶対違う場所を想像してるやつとか。そういう情景描写もそうだし、あと言葉の詰め方ね。平成のエモって初期衝動とか突っ走ってた部分ってあると思うの。それに対して令和のエモって言葉の詰め方とかでエモが科学されてると思うの。たとえば「グッときた心臓バンっと割れる」という歌詞のメロディの対する言葉の詰め方、あとここで「心臓が割れる」という言葉がくることの意味合いとかでエモさが増してくるように科学されてると思うの。メロディへの言葉の詰め方や「心臓」というワードチョイスとかで、エモさが計算されて作られてると思うんだよね。それによってオレンジスパイニクラブがTikTokでブレイクすると。「握ってたいのはスマホじゃない あんたの右手だ」で「キャー!!」となる(笑)
上野:こういう表現っていつの時代にもあるんだね。
カンノ:こういうことでグッとくる10代が多いんだと思います。
上野:平成サイドのエモは、基本的には言いたいことは同じなんですけど、出てきてない言葉が1個あります。平成にあって令和にないもの、それは「モッシュピット」ですね。
カンノ:なるほどな~、とくに今のご時世じゃ不可能だもんね。あと平成の後半の時点でモッシュやダイブが禁止になっていったりしたもんね。だから文化の問題だよね。
上野:文化の問題もあるし、直近のコロナ禍の問題もあるんだけど、さっき令和のエモは科学されているという話をしたじゃないですか。でもこれまで流してきた平成のエモい曲やモッシュピットみたいなものって、すべてを忘れて一緒くたになっていくことってあったんだよね。
カンノ:そうだね、ぐっちゃぐちゃになるってことね。だから令和でのブレイクとかがTikTokやYouTubeみたいな、現場じゃないじゃん。もちろんライブハウスとかでやっているんだけど、それ以上の広まりかたって、たとえば路上の弾き語りがYouTubeとかにアップされてバズるみたいな感じだから、もはや「現場って何?」みたいなね。それでいうと、平成の現場って完全にライブハウスだったもんね。
上野:それはある程度明確にあったよね。そのなかで、バンドでも人気がありモッシュピットも起こり、あとなによりエモかったバンドの曲を紹介したいなと思います。ELLEGARDENで「ジターバグ」
カンノ:これはエモだね。
上野:アハハハハッ!
カンノ:やっぱりボーカルの人がね、人差し指を立てた時点でエモなんだよ。「一切の~♪」で人差し指を立てるんだよ(笑)これがエモなの。あと細見っていう名字なのに、どんどんムキムキになって太くなっていく、これがエモなの(笑)どんどん身体が大きくなって、入れ墨もブワーっと入って。
上野:でも細見って名字だけど、名前は武士だから。
カンノ:あ~!「どっちに転がるのかな?」みたいな!そうしたら武士のほうに転がっていった(笑)
上野:身体が武士側に行った(笑)この話、全然エモと関係ねえけど(笑)
カンノ:エモだな~。それはエモい。あ~、思い出した!わかった、わかった!
上野:違うのよ(笑)でもね、これまで流したeastern youthやNUMBER GIRLとELLEGARDENが違うなと思うのは、まだスマホじゃないガラケーのとき、待ち受け画像というのがありまして、その待ち受けにみんな、好きなアーティストの写真とキラキラした文字で歌詞が書いてあったりしたよね。とくに女子。それでELLEGARDENの「ジターバグ」は多かったよね。
上野:そうそう、多かったね。で、ああいうことって今でもあるのかな?
カンノ:もし今の時代がまだガラケーだったら、オレンジスパイニクラブの「キンモクセイ」の歌詞の「握ってたいのはスマホじゃない あんたの右手だ」が選ばれて…、スマホがないんだよ!!ガラケーの話をしてんだよ!!パラドックス起きちゃったよ!
上野:そういう意味でもELLEGARDENはこれまでのエモとはちょっと違う、今の時代よりの感じはしたかなと思いました。そしてELLEGARDEN、16年ぶりにアルバムを作るというね。それ自体がもうエモい。
カンノ:いいね、平成と令和を駆け抜けていくエモさがありますね。今日は「令和のエモ、平成のエモ」特集を行いまして、令和と平成のエモの違いを考えてみましたが、この曲は唯一令和と平成をつなぐようなエモ曲ではないかと思いまして、最後に流したいなと思います。それはフジファブリックの「若者のすべて」です。
上野:あ~、なるほど。
カンノ:この曲がリリースされたときは、じつはそんなに注目されてなかったよね。
上野:この曲がここまでの存在になるとは思わなかったよね。
カンノ:だって音楽の教科書に載るんだよ。
上野:本当ビックリだよね。
カンノ:この曲が発売されたときって、「アコースティック方向のいい曲だな~」くらいなもんだったじゃん。それがあれよあれよとね。Bank Bandがカバーしたり。そして「最後の花火に今年もなったな」というエモ情景ですよ(笑)これが令和エモ情景!
上野:たしかにね(笑)
カンノ:という意味で令和と平成をつなぐエモ曲を聴いてお別れです。
『Radio OK?NO!!』はパーソナリティーの上野翔とカンノアキオが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。Podcastは毎週月曜日、文字起こしは毎週月曜日と金曜日に前後編にわけて更新しています。