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サムオブ井戸端話 #134『ケツメイシと体調~J-POPの効能~』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

ケツメイシの新曲からJ-POPの効能について考えるサムオブメンバー。後編ではヒップホップのようなリアルを歌う音楽も、J-POPのような虚構の音楽も、どちらも聴く人を麻痺させる効能がある話から、音楽を好きになる通過儀礼として「一度J-POPを嫌いになる」モードがあるという話をしました。(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:なんか極端な気がするの。「そのままでいいよ」と「根性論」の行ったり来たりな気がして。

YOU:なるほどね。

カンノ:もっと違う軸があっていい気がするんだけど。

YOU:そのままでいい部分とそのままではいけない部分って生きててあるじゃないですか。で、そのままではいけない部分は大人としてどうにか対応していくじゃん。でも、その切り分けができない人が多くなったのかな。そうなると薄く励ましてくれる曲が聴かれるのかな。まぁ難しいよね、メッセージソングばかり聴いてるわけでもないし。

カンノ:ここ最近の日本のヒップホップにノレない理由の一つが、今みんなめちゃくちゃラップうまいじゃん。

YOU:そうだね。

カンノ:ラップの手数、速さ、リズム感。見たことがない口の速さで「俺はこうのし上がってきた」「努力をしてきた」を言いがちなの。

YOU:そういう文化だもんね。

カンノ:だから高速でビジネス書を読まされてる気分なの。

YOU:なるほどね。

カンノ:で、めちゃくちゃ速いから、「そうしなきゃいけない」気分にさせられるというか。聴いてて焦っちゃうんだよね。

YOU:それによって駆動されてる音楽なのは間違いないよね。「こうやって俺は生きてきた。お前はどうだ?」

カンノ:極端なんだよね。

YOU:『スーパースターを唄って。』という漫画があるんだけどさ。

YOU:これはヒップホップの漫画で、売人をやっている男がラッパーとして成り上がっていく話なの。つまりこの主人公にとって音楽はすごく切実なもの。学歴もない、家族もボロボロ、犯罪に加担させられている自分がまともに生きていくためには音楽しかない、みたいな追い詰められ方というか。そういうところからスタートする話なの。つまり、落ち込んでるときに音楽が忍び込んできて、感覚を麻痺させるっていうのはわかるんだけど、一方でどうしようもなく音楽に救われている人もいるわけじゃないですか。結局、どっちも同じことな気がしている。鼻垂らしながらJ-POPを聴く人も、音楽でめっちゃ救われてる人も、同じ音楽のもたらす高揚のなかにいる気がするの。だから難しい。「音楽なんか聴いてないで目の前の問題にちゃんと対処しろよ」と一人の大人として思うこともたくさんあるのだが、J-POPを含む音楽の効能は良い側面もある。ただ、我々はこうして言葉にしているけど、音楽を聴いてる多くの人はそれを意識していない気がする。

カンノ:たとえば前回話したように、僕はZAZEN BOYSクチロロが大好きで、この2組から知的好奇心をくすぐられまくりました。

カンノ:この2組の音楽に心が揺さぶられるということには何ら問題はなさそうなんだけど、雪の降る冬の寒い夜にケツメイシを聴いて涙して「このままでいいんだ」と現状肯定しようとすることが「なぜダメなのか?」っていう。同じ悦の浸り方だと思うんだよ。どちらもある種の麻薬的なことだと思うの。その違いって何なんだろう。

YOU:今なんとなくわかったのが、聴き手を突き放すタイプと「大丈夫だよ」と包むタイプの違いかもね。

カンノ:なるほど。

YOU:もちろんどっちも使える人もいる。銀杏BOYZとかはそうかな。

カンノ:銀杏は突き放したあと、包むね(笑)

YOU:でも突き放すことを全然しない人もいて、ケツメイシはその代表格かもしれない。たとえばミスチルの最新アルバムってファンもあまり話題にしていないみたいなの。

YOU:ほとんどプロモーションを打っていない。タイアップ曲が1曲もないんだってね。そして、キャリアでも類を見ないほどの暗めの歌詞にシリアスな曲調。だから今回のアルバムのミスチルはファンを突き放しにかかっている。まぁ、『深海』とかこれまでのキャリアでそうゆうことがなかったわけではないし、だからこそ単なるJ-POPではなくて真剣に語られる部分があると思うのだけど。

YOU:で、前回カンノが話した向井のインタビューでは「分かられたい」みたいな話もしてたじゃん。

YOU:でも、そうじゃないと思うの。向井が、「俺はこう思ってるからお前は大丈夫だ」みたいなことは言わないじゃん。

カンノ:そうだね。

YOU:そのリスナーを突き放したりする感じが俺たちは好きじゃん。たとえばミュージシャンの鬼気迫るライブ映像とか見ると、「怖い!けどかっけ~!」みたいな気持ちってあるじゃん。それを「好き」って言えるようになるには、極端な話、J-POP的な世界を一度嫌にならないと無理だと思うんだよね。

カンノ:そうだね。

YOU:あとめちゃくちゃ単純に、小中学生のころ、J-POPを聴いてイキがっていたやつが俺のことを虐げてきたし、「あいつらとは違うんだ」っていう意識は多少なりともあったんだよ。少なくとも俺は。でも、こういう人は少なくないんじゃないかな。

カンノ:この話は一旦区切って続きをやろう。J-POPが嫌いになった瞬間について思い出したことがある。僕は、Mステが大嫌いだったんですよ。

YOU:アハハハハッ!よし、あとで続きをやろう(笑)

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SOMEOFTHEM OF PODCAST 第9回「好きなカップリング曲」特集(前編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第9回はカンノが好きなカップリング曲をただただ流していく「好きなカップリング曲」特集の書き起こし(前編)を掲載します。ポッドキャストは下記リンクから。

 

 

カンノ:今週はただただ僕の好きな曲を流す息抜き回です。

オノウエ:ついにそういう回が出ましたね(笑)

カンノ:でも、さすがに単純な「好きな曲」特集だと看板としてアレなので、一つ縛りを設けて好きな曲を流したいなと思います。カップリング曲。

オノウエ:カップリング。

カンノ:みなさん、カップリング曲って知ってますか?

オノウエ:たしかに(笑)カップリングってまだ言うのかな?

カンノ:今、発売されてますマキシシングル。

オノウエ:フフッ。

カンノ:その1曲目が表題曲やA面と言われる曲でございますけど、2曲目以降収録されている、インストやアカペラ楽曲を省いて、そこに入っている表題とは別の曲ですね。これをカップリング曲と言います。アルバム曲でもない、シングルの裏面。マジで地味な曲。

オノウエ:そうだね。

カンノ:今回はあえてこのサブスク時代にカップリング曲をフィーチャーしたいなと思います。

オノウエ:そのなかでカンノが好きな曲ですね。

カンノ:これは特集のネタが切れたときにいくらでもできます。

オノウエ:無限にできるね(笑)

カンノ:こちとら、どれだけカップリング曲を聴いてきたか(笑)マキシシングル世代ですからね。ということで、シングルの表題曲ではない地味な曲だが「こんなに良い曲もあるんだよ」というのを紹介する「好きなカップリング曲」特集をお送りします。まずは僕らが大好きなバンドのカップリング曲を聴きましょう。ASIAN KUNG-FU GENERATIONで「エントランス」

オノウエ:懐かしいですね。

カンノ:じゃあ次の曲いきましょうか。

オノウエ:そうだよね(笑)

カンノ:えっ?喋んなきゃダメ?

オノウエ:この曲も、これから流す曲も、理由はすべて「好きなカップリング曲」

カンノ:以上、終了(笑)

オノウエ:そりゃそうだ(笑)

カンノ:一応喋りますか(笑)2003年の1stシングル『未来の破片』の2曲目。

カンノ:「エントランス」というタイトル含め、こっちのほうがメジャーデビュー曲っぽいのにカップリング。

オノウエ:こっちのほうがリード曲っぽいよね。

カンノ:それでアルバム『君繋ファイブエム』に収録されるのは3曲目の「その訳を」っていうね。その戦略はいまだによくわからないんですが(笑)

 

 カンノ:のちにシングル『ループ&ループ』にライブ版の「エントランス」が収録されるんですが、「あー!さっそう!」とゴッチのモノマネをよくしていましたね(笑)

 

オノウエ:ありましたね(笑)

カンノ:急にアジカンを聴き返したくなるときに、まずこれを聴いてるね。

オノウエ:じゃあアジカンのなかでもかなりトップクラスで好きなんだね。

カンノ:だって「アジカンカップリングのこれがいいんだよ~」って言いたいじゃん。

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:「リライト聴くなら、こっち聴かなきゃ~」みたいな(笑)

オノウエ:面倒な古参ファンみたいになってるな(笑)

カンノ:では次にこちら。野猿

オノウエ:野猿カップリング…?マジでわからないな…

カンノ:全然わからないでしょ。僕も最近、野猿を聴き直したときに「これは良い曲だな~」と思ったものがあったのでお聴きください。野猿で「泳げない魚」

オノウエ:これは初めて聴きました。

カンノ:改めて説明すると、野猿はフジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』内で結成された音楽ユニットです。とんねるずの二人と番組スタッフで構成されたダンスボーカルグループ。2001年に「撤収」という名前の解散をしました。当時僕らはテレビで見てました。紅白にも二回出場しています。

オノウエ:二回出てるんだね。

カンノ:そんな野猿の2000年リリースのシングル『First impression』のカップリング曲です。メインボーカルはCAという当時音声スタッフをしていた女性です。

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:急遽、女性が入った時期があったんですよね。口下手でいじられていた印象があります。で、この表題曲はめちゃくちゃ宇多田ヒカルを軸にしたJ-R&B楽曲です。

カンノ:そういう意味でいうと、この表題曲はめちゃくちゃわかりやすくて良い曲なんです。ただ、このカップリングの「泳げない魚」がですね、とんねるずが参加してません。

オノウエ:あ~、そうなんだ(笑)

カンノ:CAさんという女性と、野猿の男性ボーカリストの二人で歌ってる曲です。で、聴いてもらったらわかると思うけど、イントロでリズムパターンが変わるよね。

オノウエ:そうだね。

カンノ:これ、アウトロもそうなるの。

オノウエ:なるほど。珍しいアレンジだね。

カンノ:この曲もR&Bテイストが軸だと思うけど、ラテンの要素もリズムパターンとしては入っている気がして、なにかまかり間違ってシティポップ楽曲に受け入れられる可能性がある。

オノウエ:この曲は全然ありえそうだね。

カンノ:で、この曲を作ったのもとんねるずではお馴染み、「作詞:秋元康 作曲:後藤次利」タッグですよ。あのさ、どこで本気出してるの?

オノウエ:アハハハハッ!

カンノ:秋元康構成作家だからさ、当たり前だけど、「なにが売れるか?」で動くわけだよね。これは音楽的にめっちゃ好きな曲なんだよ。でもカップリングなんだよね。やっぱりわかりやすい曲が表題曲になる。あととんねるずに対しては「情けねえ」みたいな男らしいことを歌わせて、「ガラガラヘビがやってくる」みたいなコミックソングをやりつつ、「雨の西麻布」で演歌っぽいこともさせるじゃん。それらが全部同一線上なんだよね。

カンノ:だから「かっこいい」だけの曲とかってそこには入ってこない。

オノウエ:少なくともリード曲にはならない。

カンノ:だから秋元康が「これはそういうモードじゃないよね」と思った曲ほど、後藤次利がおもしろいことをしている場合がある。これはそういう曲かなって思います。

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

SOMEOFTHEM OF PODCAST 第8回「エンターテインメント過剰」特集(後編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第8回はJ-POPミュージシャンの度が過ぎたサービス精神を感じる楽曲を紹介する「エンターテインメント過剰」特集の書き起こし(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:では続いてですが、現代のエンターテインメント過剰ないしサービス過剰J-POPはこの人たちが担っているんじゃないかなと思います。Mrs. GREEN APPLEで「ダンスホール

 

カンノ:まずは歌い出しのブレス。こんなに息吸わなくていいからね(笑)

オノウエ:あれって残すタイプと消すタイプで分かれるよね(笑)

カンノ:これは残しに行ってるブレスじゃん(笑)

オノウエ:なるほどね(笑)

カンノ:僕はこの歌い出しですべてを取りに来ている曲だと思うの。「いつだって大丈夫 この世界はダンスホールの部分でいつも僕が気になるのは「この世界は」の歌い方。

オノウエ:歌い方?

カンノ:印象の残し方ですね。絶妙にメロディになってるか微妙な歌い方というか、言葉の詰め方。おそらくやろうと思えばもっと普通に歌えると思うの。それをあえて変な区切り方というか、言葉の詰め方で歌ってると思うの。

オノウエ:なるほど。

カンノ:あとは過剰に韻っぽく聴かせている。「u」の母音で終わらせ続けてるんですよね。これも印象に残していると思います。あとこの楽曲にも星野源味があって。

オノウエ:星野源味(笑)

カンノ:この曲の間奏部分を聴いてください。完全に「SUN」のイントロのギターリフと合致します。

カンノ:みんな『YELLOW DANCER』が大好きなんですよ!で、タイトルが「ダンスホール」ですよ。みんなを踊らせたいんです!J-POPをサービス産業と捉えると、その方向になるんですね。

オノウエ:星野源の遺伝子が様々伝播しているんですね。

カンノ:で、悪い意味ではなく、軽薄に伝播してるね。あとはこれ、J-POP特有の大丈夫ソングですから。

オノウエ:あ~(笑)

カンノ:この世界はダンスホールだから、いつだって大丈夫なの(笑)オノウエ君の花粉症も「いつだって大丈夫♪」

オノウエ:ちげえよ、現実は止まらない涙と鼻水と皮膚のピリつきなんだぞ!

カンノ:アハハハハッ!

オノウエ:大丈夫じゃないんだよ(笑)

カンノ:だから、言い古されたことをどう新しい技術革新で歌うかがJ-POPだなと、この曲を聴いて思った次第ですね。これが最新J-POP。歌われることはまったく変わらない。「切なくてキュンキュンする」、「大丈夫」、「ありのままでいい」など。このような言い尽くされたことを、どのような現代の技術で歌うか。その最新型がミセスな気がしました。だってミセスも「大丈夫なわけねえよ」って思ってるよ(笑)

オノウエ:そりゃそうだろうね(笑)本当に大丈夫だと思ってる人は曲作らないからね(笑)

カンノ:これまで星野源さんの話が続いたので、星野源さんのエンターテインメント過剰楽曲を聴きましょう。星野源さんのエンターテインメント過剰楽曲、正直めちゃくちゃあるんですけど、とくに思った楽曲をお聴きください。星野源で「アイデア

オノウエ:この曲はエンターテインメント過剰がコンセプトみたいなものだからね。

カンノ:この曲は2018年リリースで、朝ドラ『半分、青い。』の主題歌。で、その主題歌で流れる部分はワンコーラスだけだったんですよね。それでフル尺公開となったタイミングで、2番以降でSTUTSが出てくるという見せ方。「やられたー!」と当時思いました(笑)しかも弾き語りパートも出てくる。そして最後はバンドも交えて大団円。国民はいつだって星野源の手のひらの上なんです。

オノウエ:国民(笑)

カンノ:こういう手法ばかりに着目する「星野源のアイデア」特集はいずれやりたいですね。この人の手法にずっと惹かれてましたから。今は距離取ってますけど。

オノウエ:わざわざ言わなくていいと思いますが(苦笑)

カンノ:これはエンタメですよね。では、また全然別角度のエンターテインメント過剰曲を聴きましょう。このバンドはエンターテインメント過剰だと思うのでお聴きください。9mm Parabellum Bulletで「Mr. Suicide」

オノウエ:とても久しぶりに聴いた気がします。

カンノ:メジャーデビュー前の曲ですからね。やっぱり、なんでこのサウンドにこんな昭和歌謡みたいなメロが乗るのか、さっぱりわからない。

オノウエ:9mmってその感じがありますよね。メタル影響のサウンドに、メロが歌謡曲っぽい。

カンノ:この感じ、日本人は大好きだよね。サウンドもメロも総じて古典的だと思うんだけど、掛け合わせると変なんだよね。9mmが出てきたときって「突然変異ロック」みたいな言い方されてたよね。

オノウエ:「ミュータントロック」みたいなね(笑)

カンノ:凛として時雨と並んでね(笑)

カンノ:これは日本人を相手取ったバンドな気がするんだよね。サウンドの激しさと、メロの懐かしさ。で、この感じは後々地下アイドルがやっていった気がするの。ロックサウンドに乗せて歌う地下アイドルって増えていくじゃん。そういうサウンドに日本人にとって馴染み深いメロが乗って、アイドル曲として展開させていく流れを考えたら、その先代にいるのは9mmがいるかもなと思ったの。

オノウエ:それは新説かもね。

カンノ:たとえばBiSが歌ってもいいじゃん。

カンノ:あと、ここ最近のミュージシャン、Adoや優里、ミセスもそうかな。声がジェットコースターだなと思う人が多いの。

オノウエ:それはどういう意味で?

カンノ:高い、低い、速度的なところもすべて。

オノウエ:声の高低も歌い方自体も。

カンノ:それが9mmの場合はサウンドだなと。サウンドや曲展開がジェットコースター。とくに「Mr. Suicide」がジェットコースターっぽいと思った。

オノウエ:改めて聴いたけど、これは不思議な曲だよね。

カンノ:そうだよね。で、ジェットコースター性はエンタメ過剰だよ。たとえば星野源「アイデア」はジェットコースター乗ったのに、途中でお化け屋敷になる曲だと思うの。

オノウエ:なるほどね。あの曲自体が一つのテーマパークだ。

カンノ:1曲のなかでのジェットコースターのコース作りがエンタメ性になるというかなと。そのサービス性が高ければ高いほど「エンターテインメント過剰」という意味でございます。

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

サムオブ井戸端話 #133『ケツメイシと体調~J-POPの効能~』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

雪が降る寒いなか、ケツメイシの新曲が沁みて涙を流したのと同時に「こういう人が高い壺を買うんだな」と思ったカンノメンバー。「このままでいい」「大丈夫」と歌うJ-POPを聴く層は、心身が不調で現状が大丈夫じゃない人ではないかという話をしました。

 

 

カンノ:1月半ばに雪が降った日がありました。雪が降るなか、外で仕事をしていたんです。めちゃくちゃ寒くて。手袋も濡れて使いものにならなくなって。缶のホットコーヒーがすぐに冷めちゃって。身も心も冷え込みました。

YOU:可哀想に…(苦笑)

カンノ:もうボロボロで死んじゃいそうでした。そのときに、たまたま新着プレイリストで流れてきたケツメイシの最新曲があったんです。「We GO」という曲なんですが。ちょっと聴いてみてください。

YOU:2000年代じゃん(笑)

カンノ:これを聴いて本当に心から温もりが沁みて泣いちゃったんだよ。

YOU:アハハハハッ!

カンノ:本当に良い曲で。「音楽を聴き続けてよかった!」と思ったの。

YOU:おい、この話はブログにならないぞ…(苦笑)

カンノ:でね、めっちゃ良い曲だと思って涙が出たのと同時に、「こういう心情の人が高い壺を買うんだな」と思ったの。

YOU:アハハハハッ!

カンノ:泣きながら騙される人の心情になったの(笑)

YOU:心がしっちゃかめっちゃかで、主観なのか客観なのかさっぱりわからない(笑)

カンノ:でね、J-POPの効能ってこういうことだなと思ったの。

YOU:まぁ、わかるよ。J-POPって高い壺を買わせる行為に等しいよね。

カンノ:J-POPって身も心も弱くなっちゃった人に対してずっと「大丈夫だよ」と言ってあげ続けることによってお金が生まれるんだよね。「現状を変えよう」って曲はJ-POPじゃなくてメッセージソングになっちゃうの。

YOU:なるほど。たしかにJ-POPは「このままのあなたでいいんだよ」だよね。

カンノ:そう。「ずっとこのままでいいんだよ」と言い続けるのがJ-POPなの。励ましソング、大丈夫ソング、ありのままソング、素直ソングの大味さってめちゃくちゃ現代に都合がいい作りになってるの。

YOU:なるほどね。30年停滞した日本にピッタリだね。

カンノ:そうなんだよ。「ずっとこのままでいい」って言われ続けた結果が今だし、音楽もそういうものが残ってる。やっぱりね、弱い者に合わせた表現はその程度のリテラシーにならざるを得ない。っていうことを雪の寒空のなか、泣きながら思いましたね。

YOU:もうすべてが可哀想だよ…(苦笑)

カンノ:心身の不調のときによく思うんだけど、人間の「面倒臭い」とか「考えたくない」という欲望って最強だね。

YOU:映画『花束みたいな恋をした』でも主人公の菅田将暉演じる麦くんが「もうパズドラしかできなくなった」的なことを言ってましたが、あの状態ですよね。

YOU:もう小難しいことなんか考えたくないし、音楽はただ楽しいだけのやつがいいっていう人は多いよね。

カンノ:そういう人のためにわかりやすい装置としての励ましソング、大丈夫ソング、今のままでいいよソング、ありのままソング…。

YOU:全部ストロングゼロ状態だ(笑)

カンノ:まさしくそう。最近、ストロング系アルコール飲料の縮小傾向のニュースがありましたが、それと同じように日本の音楽界も大丈夫ソングを縮小させてほしいんです!

YOU:アハハハハッ!

カンノ:やってくれないかな。

YOU:日本の投票率が低いのも全部大丈夫ソングが蔓延った世界だからじゃないかなって思うね(笑)

カンノ:そうですよ!サクッと酔ってる場合じゃないんですよ!

YOU:本当そうだよね。

カンノ:あとはカバー曲。今のカバー曲って音楽を聴くのが面倒臭いと思ってる人のためにあるもんね。

YOU:昔は意味合いが違ったんだけどね。昔はそもそもの曲数が少なかったのと、定番曲というのものが少なかったからこそ持ち歌を増やすために他人の曲をカバーする文化というものがあったみたいだけど、今のカバー曲はそれこそJ-POPの”そのままでいいよ性”を強めるためのものとして存在してる感があるよね。

カンノ:僕は最新のカバー曲をリサーチしながら聴くタイプの人間なので、もちろんそんな人は珍しいタイプだと思うの(笑)でも基本的にカバー曲って音楽をあまり聴かない人のために存在していると思うんだよ。「なんでもいいから知ってる曲流してくれ」プレイリストね。

YOU:フフッ。

カンノ:だって歌うまい人はその人のオリジナル曲よりも、みんなが知ってる曲歌ってくれたほうがいいでしょ。それがちょうどいいんだよ。

YOU:なるほどね。

カンノ:ちょっと話が展開しちゃったので最初に戻ると、J-POPと体調は密接につながってると思うんです。

YOU:カンノは今、日本人の体調が悪いからJ-POPが売れ続けているという話をしているんだね(笑)

カンノ:だって僕がそれを体感したんだから(笑)ちょっと言わせてくれ、僕はね、めちゃくちゃ音楽聴いてるんだぞ。

YOU:ナメるな!(笑)

カンノ:俺をナメるな!めちゃくちゃ音楽を聴いてるんだ!

YOU:アハハハハッ!

カンノ:まぁ、冗談が過ぎたけどさ(笑)でも今、ケツメイシの新曲を聴いて僕らは「めちゃくちゃ平成中期みたいなことやってるな」と思うわけじゃん。平成の匂いのするハートフルさで思わず笑ってしまうリテラシー

YOU:そうだね。

カンノ:でも普通の人はこんな受け取り方をしないんだよ。

YOU:そりゃそうだね。

カンノ:本当にハートフルで良い曲だと思ってケツメイシのライブに行くんだから。

YOU:そうだよな。

カンノ:で、そういうときに大事なのは、ケツメイシは自分たちのラップスキルを見せるようなライブは絶対にしないんだよ。

YOU:それはJ-POPアーティストとして逆に職人だよね。

カンノ:その意味ではマジでプロフェッショナルだと思う。

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SOMEOFTHEM OF PODCAST 第8回「エンターテインメント過剰」特集(前編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第8回はJ-POPミュージシャンの度が過ぎたサービス精神を感じる楽曲を紹介する「エンターテインメント過剰」特集の書き起こし(前編)を掲載します。ポッドキャストは下記リンクから。

 

 

カンノ:J-POPというのは人を楽しませ、喜ばせることが役割じゃないですか。僕も様々J-POPを聴くんですけど、たまにエンターテインメント性の度が過ぎて「過剰だな」と思うことがあるんです。つまり、人を喜ばせようとしすぎている楽曲があるんです。

オノウエ:ほお。

カンノ:今回はその曲たちを聴いてもらおうと思います。ということで「エンターテインメント過剰」特集。人を楽しませよう、喜ばせようと思いすぎて力みまくっている楽曲というのを聴いてもらいたいと思います。

オノウエ:ちょっと僕はまだイメージついてないですね。

カンノ:じゃあまずはこの人の楽曲を聴いてください。この人のアルバムを聴いて思いついた特集なので。オーイシマサヨシで「ギフト」

カンノ:こちらは2月7日にリリースされたアルバム『ユニバース』収録曲です。

カンノ:カタカナ表記の”オーイシマサヨシ”名義だと主にアニソン歌手としての活動がメインになります。で、このアルバムに入っている楽曲もほぼ全曲アニメタイアップですね。で、今回は「ギフト」を聴いてもらいましたが、全曲こんなテンションです。

オノウエ:はいはい。

カンノ:もともとはSound Scheduleというバンドのフロントマンでした。

カンノ:僕らはサウスケも聴いてましたね。

オノウエ:そうですね。

カンノ:このバンド時代を知ってるから思うんですが、アニメに絡めた言い方をすると、オーイシマサヨシって”転生”したんだなと思ったんです。

オノウエ:なるほど(笑)

カンノ:「こっち行ったんだ!」っていう。転生ものをこの人が地でやってるという。

オノウエ:この楽曲におけるエンターテインメント過剰というのは、展開の多さとか、BPMの速さですか?

カンノ:それらもあるし、あとは歌の多様性。ラップっぽいところもあれば、めちゃくちゃファンキーに歌う箇所もあり、低いところ、高いところ。

オノウエ:なるほど。

カンノ:てんこ盛りです。で、これが全曲です。僕が『ユニバース』というアルバムを聴いて思ったのは、星野源さんが2015年に『YELLOW DANCER』というアルバムを出しています。

カンノ:これはタイトル通りなんですが、星野源さんは人々を踊らせる方向に特化させたんですね。そのあとのキャリアはまた別方向に行くんですが、僕のイメージで言うと、オーイシさんはこの『YELLOW DANCER』を日本国内向けに、ある種の良い意味で軽薄化方向に特化させたと思うんです。本当に人を踊らせるためだけに特化させたアルバムだなと思ったんです。そこに意味は付随させない。全曲アニソンである。

オノウエ:アニメのタイアップだから、楽曲自体にメッセージ的な意味は付随しにくいもんね。あと僕が聴いて思ったのは、ヒャダインとかね…

カンノ:あっ!もう、ちょっと…

オノウエ:あっ、ごめんなさい…(苦笑)僕、本当に企画内容知らないので…(笑)

カンノ:ちょっと頼むよ~!ちゃんと美味しいものは後で取っておいてあるんだから!あのね、ポッドキャストってコース料理なの!わかる?

オノウエ:すみません、すみません…(苦笑)

カンノ:今回のテーマ的に、1曲1曲がてんこ盛りなので、そもそも1曲がコース料理的なのは認めます。でも今回は「エンターテインメント過剰」特集と銘打っているのは、つまり、私自身がエンターテインメントを担った特集を打っているんです。私も考えているんです。取り組んでるの。

オノウエ:わかりました、わかりました…(苦笑)

カンノ:あ~!今日で最終回かな?

オノウエ:少なくとも僕は今日は相槌しか打ちません!

カンノ:アハハハハッ!

ヒャダインは番組ラストのJ-POPクイズで出題されるので、是非お聞きください!)

カンノ:でもおっしゃる通りで、ヒャダインという存在がエンターテインメント過剰の一番わかりやすいところなの。2010年代のアイドルソングってそういう作りだったんだよね。

カンノ:で、オーイシさんの話に戻すと、ファンクとかソウルとかカントリーとかの要素を用いて人々を踊らせるアルバムを作ってるんだよ。で、『YELLOW DANCER』もそうだったじゃん。

オノウエ:そうだったね。

カンノ:だから僕が「ギフト」という楽曲を聴いて思い出したのは「地獄でなぜ悪い」なんですよ。

カンノ:それをもっとエンタメ業ないしサービス業方向に特化させたと思うの。で、本来はこの路線にsumikaがいたと思うの。

カンノ:そのノリを、オーイシマサヨシがめっちゃまくったようなアルバムを出した気がしていて。星野源が『YELLOW DANCER』で作った道筋をsumikaが行ってたんだけど、猛スピードでオーイシマサヨシがやって来た。

オノウエ:なるほどね。

カンノ:あとよく聞く話で、オーイシさんはアルバイト時代が長かったエピソードがあるじゃないですか。だから、今手にしている音楽仕事を絶対に手離さないという意気込みを感じるよね(笑)

オノウエ:まぁ、その心意気はあるでしょうね。

カンノ:もちろん「エンターテインメント過剰」って悪い意味じゃないですよ。ただ、この人の野心家としての熱の強さは感じるよね。「一生これをやる」という意気込みが見えるJ-POPって度が過ぎてておもしろいなと思うんです。今回はこういうテーマです。

オノウエ:なるほどね。

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

SOMEOFTHEM OF PODCAST 第7回「33歳」特集(後編)

カンノアキオとオノウエソウによる、SOMEOFTHEMのポッドキャスト番組『SOMEOFTHEM OF PODCAST』を配信しています。こちらではその書き起こしを前編、後編に分けて掲載します。第7回はオノウエソウが33歳になったことを記念して、レジェンドミュージシャンの33歳のときの楽曲を聴いて「なんで俺たちはこうなれなかったんだ!」と悔しがる「33歳」特集の文字起こし(後編)を掲載します。ポッドキャストと(前編)は下記リンクから。

 

 

カンノ:(元気なく)井上陽水の33歳楽曲でーす。

オノウエ:井上陽水

カンノ:「お元気ですかぁ~?」「元気じゃねえよ!」

オノウエ:一人で全部やってますね(笑)

カンノ:上下分けてね(笑)

オノウエ:ポッドキャストで上下分けるなよ(笑)

カンノ:では、井上陽水さんが33歳のときの楽曲を聴きましょう。井上陽水で「リバーサイドホテル」

オノウエ:この曲が33歳ですか。

カンノ:ヤバいよね。今聴いても、なんでこれが売れたのかさっぱりわからないね(笑)盛り上がらないし、気持ち悪いし(笑)井上陽水さんは1948年8月30日生まれなので、33歳は1981年8月30日からの1年間なのですが、陽水さんはパクられたあとです。

オノウエ:あ~!なるほど!

カンノ:結婚して、離婚して、パクられて、再婚して、長男が生まれて、33歳。

オノウエ:もう、すごいね…

カンノ:全部やったことない(笑)

オノウエ:人生経験だね。

カンノ:「大変ですかぁ~?」

オノウエ:大変だっただろうな…(笑)

カンノ:この質感のミュージシャンって後にも先にも全然聴いたことないんだけど、ラテンなのに冷たいってすごいよね。ノリは陽気なはずなのに、質感は全然温度を感じない。これに男女の変なもつれた感じのことを歌うのが映えるなと思いますね。これが33歳。

オノウエ:そうだよね。

カンノ:33歳って初期衝動じゃないんだよね。全部やり切ったうえで、なにを選択しているかじゃないですか。桑田もユーミンも陽水も。

オノウエ:全員2周目だよね。ある程度、20代のうちにいろいろやって、30代序盤もいろいろやって。

カンノ:いろんなことやり切って、悩みも終わって。

オノウエ:じゃあ今までの経験を活かしてこれからなにをやっていこうか。

カンノ:自我が出る年齢かもしれない。だから今回、目立ったシングルを流せてないのはそういうこと。それが33歳のリアルだよね。

オノウエ:なるほどね。

カンノ:レジェンドミュージシャン3組の楽曲を流しましたが、一番のレジェンドの33歳のときの楽曲を聴きましょう。美空ひばり

オノウエ:あ~、なるほど。美空ひばりの33歳について、一度も考えたことなかったな。

カンノ:33歳ってこういうことを歌う年齢なんだなと自覚させられた曲を聴きましょう。美空ひばりで「それでも私は生きている」

オノウエ:もうこれを聴くと、年齢とかどうでもよくなるね。

カンノ:33歳の美空さんに「死んじゃだめよ」と言われるという。涙ながらに「はいっ!」と思う(笑)「だめよ だめよ だめよ」と言われて「はい、絶対生き抜きます」と(笑)

オノウエ:なるほど(笑)

カンノ:この楽曲、初めての阿久悠作品だそうです。

オノウエ:そうなんですか?

カンノ:で、阿久悠美空ひばりは年齢近いらしいんですが、美空ひばりは天才少女として世に出てきたから、ずっと「美空ひばりに歌ってもらうには」という歌詞の研究をしていたみたいです。

オノウエ:へぇ~!「いつか一緒に仕事したときには」みたいな。

カンノ:そういうこと。それが「だめよ だめよ だめよ 死んじゃだめ」

オノウエ:なるほどね。

カンノ:この説得力はなんですか?ということは、阿久悠も33歳に近いからね。

オノウエ:そっか、阿久悠も30代中盤なのか。

阿久悠は1937年2月7日生まれ。『それでも私は生きている』のリリースが1971年3月10日なので、阿久悠は34歳になったばかり。)

オノウエ:たしかに美空ひばりは歌詞を書いてるわけではないから、なんとなく分かるけど、歌詞を書いた阿久悠も同じ年齢くらいと考えると、ちょっとすごいね。

カンノ:もうはっきり分かったけど、33歳っておじさんだしおばさんなんだよ。で、この2人はその役割をやってるの。その事実、引くよね~。

オノウエ:引く(笑)

カンノ:若いことに価値があるのはもちろんわかるけど、それによって失ったものもあるよね。もちろんそれが一辺倒の解答だとも思ってないけど、「だめよ だめよ だめよ」と言える力。それが33歳のときに持っていたわけだから。この年齢企画で初めてすごく年上のミュージシャンをフィーチャーしたわけですが。

オノウエ:だって今回紹介した33歳のときの楽曲って、僕ら生まれてないからね。

カンノ:私たちは1990年生まれですからね。今回は昭和楽曲を紹介しましたけど、年齢とのギャップみたいなものを痛感するね。あと現代とのギャップ。

オノウエ:時代背景はあるね。

カンノ:だって美空ひばり「だめよ だめよ だめよ 死んじゃだめ」と歌ってるときと、R-指定が同じ年くらいなわけでしょ。何それ?

カンノ:技術革新やイノベーションは間違いなく起こってるんだけど、それによって忘れちゃってるなにかもあって。これ、何?もちろん比べる話ではないんだけど。そのギャップは思うところがありますね。え~、今日はなんとも言えない「33歳」特集をお送りしました。

オノウエ:なんとも言えない(笑)

カンノ:オノウエ君には花粉症が辛くても「だめよ だめよ だめよ 死んじゃだめ」と美空さんと阿久悠さんの言葉を贈らせていただきます。

オノウエ:薬も効かない体になってしまいましたが、頑張ります!

カンノ:怖い言葉だな~(笑)

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『SOMEOFTHEM OF PODCAST』はパーソナリティーのカンノアキオと聞き手のオノウエソウが、最新J-POPやちょっと懐かしい曲をクイズやゲーム、時には曲同士を戦わせつつ(?)、今までになかった音楽の切り口を発見しようとする音楽バラエティ番組です。感想は是非「#サムオブ」をつけてツイートしてください!ポッドキャスト版では番組の最後に4択のJ-POPクイズを出題していますので、是非そちらもお聞きください!

サムオブ井戸端話 #132『音楽教祖のモードと信者の受け取り方』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

これまでにない熱量でZAZEN BOYS向井秀徳について語るサムオブメンバー。後編では、たくさんのJ-POPを聴いた実感を通したうえで、やはり自分が本当に信じられるミュージシャンは2~3組いれば充分であるという話をしました。前編は下記リンクから。

 

 

カンノ:向井さんも三浦さんも共通してるんだけど、歌唱法としてのラップから離れてるんだよ。歌に回帰してるの。「それは何なんだろう?」ってことを考えてるの。

カンノ:その結果、僕から出る作品の99%はノイズかもしれないけど、1%でもその思考が入り込んでいる音楽が作れたとしたら、猛烈に幸せですよ。

YOU:いい話だな~。

カンノ:で、これはそのミュージシャンを信奉している者として勝手にやっていきたい。

YOU:それはすごく良い姿勢な気がするけどね。

カンノ:ここで言いたいのは、やっている曲を真似たものを作って「チルドレンです」と言いたいわけではなくて、たとえばZAZEN BOYSでいうとシンセ弾いてラップをやっていた人が、結局ギターロックバンドに回帰して歌に力を入れていることは「何なんだろうな?」というところから思考して作品を作ってみるとか。

YOU:一度抽象化するってことね。具体ではなく。それはおもしろいね。なんかカンノ、めっちゃ健康的だな(笑)

カンノ:アハハハハッ!

YOU:なんで健康的なもの作りのサイクルに入っているのに、音楽に対する悪口は止まらねえんだよ(笑)

カンノ:悪口は言ってないよ。「J-POPに国民は救われている」という話をしたまでだよ(この井戸端話は後日掲載します)。

YOU:嘘をつくなよ!

カンノ:嘘はついてません!ちなみに今日の音楽に対する実感めいた話をすると、今日も新着プレイリストを100曲近く垂れ流しながら過ごしてて、「良い曲だな」と思ったのは1曲だけですよ。

YOU:まぁ、実際そんなもんだよね(笑)

カンノ:新着プレイリストを聴きながら、べつに心は揺さぶられないんですよ。でも、考えるんです。この曲が新着プレイリストに掲載されるというのは、この曲が商売になると踏んでるから。そのときに「この曲は誰のために聴かれてるのだろう?」と思うの。それでいうと、アーティスト名も曲名もなにも覚えていないけど、いわゆるシティポップっぽいノリの曲で、男女がベランダでの煙草が臭くて云々歌ってる曲が流れてきたの。

YOU:あぁ。

カンノ:それを聴いて「めちゃくちゃ直接的で説明的な曲だな」と思ったの。シティポップの音像でベランダという場所、煙草が臭くてどうのこうの歌う男女ってどういう曲か想像つくでしょ?

YOU:なるほど。めちゃくちゃ具体だね。たとえば山下達郎ってそんなに具体的なことを歌わないイメージがある。

カンノ:そうなの。だから、どんどんある種のリテラシーが下がっていて、わかりやすい情景とシティポップっぽい少し高尚なものが混ざったところに需要があると踏んだ、偉い誰かがいるんだなと思って聴いてたの。

YOU:出自が貧しいけど後に大成した人が金持ちになってから絵の価値や文脈がわからないから、ぱっと見が綺麗な風景画しか買えないという話と同じかな(笑)

カンノ:「この曲が良いと思う層、いるな~」っていう感覚になった。で、サブスク時代において無数に音楽は聴けるけど、本当に信じられるミュージシャンは2~3組で充分なんだよ。

YOU:良い話だよ、本当(笑)

カンノ:ほかの人たちはそういう距離感でいい。

YOU:「この危機的状況のときに、向井ならどうする?」とかね(笑)

カンノ:その思考は少し危ないんだけどね(笑)

YOU:俺も好きなミュージシャンとか作家とか映画監督とかたくさんいるんだけど、そこまで信奉している人はいないかもな。「この人のこのやり方か!」みたいなのはないな。

カンノ:もちろんこの考え方は、僕自身が創作しているからだし、当然ほかのバンドからもインスパイアはされます。でも自分の本懐の部分とか原点みたいなところはそこ。で、何度もこの話になるけど、自分の大好きな人が新作を出して、それはどういう考えのもとに作られ、その人自身はどういうモードで、なにを語ってなにを語らないのかを勝手に深読みをするんです(笑)単純に好きな人のことが知りたいんです。

YOU:創作のめちゃくちゃ良い話になっちゃいましたね(笑)

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