SOMEOFTHEM

野良メディア / ブログ / 音楽を中心に

サムオブ井戸端話 #132『音楽教祖のモードと信者の受け取り方』(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

これまでにない熱量でZAZEN BOYS向井秀徳について語るサムオブメンバー。後編では、たくさんのJ-POPを聴いた実感を通したうえで、やはり自分が本当に信じられるミュージシャンは2~3組いれば充分であるという話をしました。前編は下記リンクから。

 

 

カンノ:向井さんも三浦さんも共通してるんだけど、歌唱法としてのラップから離れてるんだよ。歌に回帰してるの。「それは何なんだろう?」ってことを考えてるの。

カンノ:その結果、僕から出る作品の99%はノイズかもしれないけど、1%でもその思考が入り込んでいる音楽が作れたとしたら、猛烈に幸せですよ。

YOU:いい話だな~。

カンノ:で、これはそのミュージシャンを信奉している者として勝手にやっていきたい。

YOU:それはすごく良い姿勢な気がするけどね。

カンノ:ここで言いたいのは、やっている曲を真似たものを作って「チルドレンです」と言いたいわけではなくて、たとえばZAZEN BOYSでいうとシンセ弾いてラップをやっていた人が、結局ギターロックバンドに回帰して歌に力を入れていることは「何なんだろうな?」というところから思考して作品を作ってみるとか。

YOU:一度抽象化するってことね。具体ではなく。それはおもしろいね。なんかカンノ、めっちゃ健康的だな(笑)

カンノ:アハハハハッ!

YOU:なんで健康的なもの作りのサイクルに入っているのに、音楽に対する悪口は止まらねえんだよ(笑)

カンノ:悪口は言ってないよ。「J-POPに国民は救われている」という話をしたまでだよ(この井戸端話は後日掲載します)。

YOU:嘘をつくなよ!

カンノ:嘘はついてません!ちなみに今日の音楽に対する実感めいた話をすると、今日も新着プレイリストを100曲近く垂れ流しながら過ごしてて、「良い曲だな」と思ったのは1曲だけですよ。

YOU:まぁ、実際そんなもんだよね(笑)

カンノ:新着プレイリストを聴きながら、べつに心は揺さぶられないんですよ。でも、考えるんです。この曲が新着プレイリストに掲載されるというのは、この曲が商売になると踏んでるから。そのときに「この曲は誰のために聴かれてるのだろう?」と思うの。それでいうと、アーティスト名も曲名もなにも覚えていないけど、いわゆるシティポップっぽいノリの曲で、男女がベランダでの煙草が臭くて云々歌ってる曲が流れてきたの。

YOU:あぁ。

カンノ:それを聴いて「めちゃくちゃ直接的で説明的な曲だな」と思ったの。シティポップの音像でベランダという場所、煙草が臭くてどうのこうの歌う男女ってどういう曲か想像つくでしょ?

YOU:なるほど。めちゃくちゃ具体だね。たとえば山下達郎ってそんなに具体的なことを歌わないイメージがある。

カンノ:そうなの。だから、どんどんある種のリテラシーが下がっていて、わかりやすい情景とシティポップっぽい少し高尚なものが混ざったところに需要があると踏んだ、偉い誰かがいるんだなと思って聴いてたの。

YOU:出自が貧しいけど後に大成した人が金持ちになってから絵の価値や文脈がわからないから、ぱっと見が綺麗な風景画しか買えないという話と同じかな(笑)

カンノ:「この曲が良いと思う層、いるな~」っていう感覚になった。で、サブスク時代において無数に音楽は聴けるけど、本当に信じられるミュージシャンは2~3組で充分なんだよ。

YOU:良い話だよ、本当(笑)

カンノ:ほかの人たちはそういう距離感でいい。

YOU:「この危機的状況のときに、向井ならどうする?」とかね(笑)

カンノ:その思考は少し危ないんだけどね(笑)

YOU:俺も好きなミュージシャンとか作家とか映画監督とかたくさんいるんだけど、そこまで信奉している人はいないかもな。「この人のこのやり方か!」みたいなのはないな。

カンノ:もちろんこの考え方は、僕自身が創作しているからだし、当然ほかのバンドからもインスパイアはされます。でも自分の本懐の部分とか原点みたいなところはそこ。で、何度もこの話になるけど、自分の大好きな人が新作を出して、それはどういう考えのもとに作られ、その人自身はどういうモードで、なにを語ってなにを語らないのかを勝手に深読みをするんです(笑)単純に好きな人のことが知りたいんです。

YOU:創作のめちゃくちゃ良い話になっちゃいましたね(笑)

f:id:someofthem:20240318172855j:image