音楽トークイベントを行うLL教室からハシノさんをお招きして、カンノとオノウエの3人で喫茶店2時間ノンストップ音楽駄話を文字起こし(全5回)。最終回はバンドや芸人の世界でなかなかイノベーターが現れないのは前の世代へのカウンターが通用しなくなったからかもね、大変だねという話。
カンノ:長く続いたバンドってあんまりいないよね。辞めたバンドがほとんどでしょ?残っているバンドの方が珍しいよね。
ハシノ:でも、昔に比べてバンドの賞味期間って延びてる気はしてて。例えば90年代ぐらいにキャリア20年のバンドって言ったら、ストーンズぐらいの大御所しかいなくてさ。理由は70年代・80年代・90年代でコロコロトレンドが変わるから。
カンノ:なるほど、すぐダサくなっちゃうんですね。
ハシノ:そうそう。ひょいひょい新しいものに乗れないと。
カンノ:時代と寝続けないと。
ハシノ:そうそう!シカゴとかドゥービー・ブラザーズとか、69年ぐらいから始めて「何回変わってるんだ!」みたいな人たちがいて。でも最近は、30年やってるバンドでも音楽性が変わらないバンドもいるじゃん。それは凄いなって思う。
オノウエ:それって本当にシーンの移り変わりが激しいことが原因だったんですか?
ハシノ:そうだと思うよ。「まだあんなことやってんの?」みたいな。メジャーのレコード会社が契約更新をしてくれないとかね。
オノウエ:今の話聞いてて何となく芸人も同じなのかなと思ったんですけど。ダウンタウンや明石家さんまもさ、すごい大御所だけど「あのとき、あの年齢だったの?若い…」みたいなことってあるじゃん。でも今、40歳の若手芸人ってざらじゃん。長くやってるけど、ストーンズじゃない芸人って多いよね(笑)
ハシノ:中堅のままね(笑)
オノウエ:中堅が延長されてるっていう(笑)それが音楽の場合はブームの更新が早くて波に乗れなくてみたいなことだとしたら、お笑いだとなんだろうって。
カンノ:波はあるよね、いなくなった人もいるから。お笑いもボキャブラブームはあるし、レッドカーペットブームもあるし。同じ出身者だけど、髭男爵とジョイマンとオードリーの立ち位置は違うしね。
オノウエ:あとは昔はイノベーターに成り得た時代だよね。ストーンズとか、ダウンタウンとか。
カンノ:人も増えたしね。
ハシノ:ジャンルも若かったからね。逆に91年頃のギターの音色やスネアの「カーン!」って音が今鳴っても何にもおかしくないじゃん。これが、68年ぐらいのドラムの音を86年に鳴らすと、めちゃくちゃ古臭く聴こえちゃうんだよ。ゲートリバーブかけないと聴いてくれない。音色の時点ではねられる。芸人だと漫才師がスーツ着る/着ない問題とかに近いかも。紳助・竜介とかダウンタウンが、スーツ着ていないことにめちゃくちゃ言われた話ってあったじゃん。「パジャマみたいな格好で人前に立つな」ってね。
カンノ:その後、逆にナインティナインがスーツ着たり。
ハシノ:そうそう!
カンノ:皆、TシャツGパンでコントやる時代ですよね。FUJIWARAや雨上がり決死隊が。
ハシノ:全員アメカジだったからね。
カンノ:そこでナイナイは、スーツを着て漫才するという選択をして大会で優勝したという。
ハシノ:今はどっちもいるし、どっちが古臭いということもない。
カンノ:逆にそれで誤魔化せないですよね。
オノウエ:確かに、前の世代へのカウンターが機能しないですね。
ハシノ:「どっちもいいじゃん!」ってね。ダウンタウンがわぁ~と来ていた時代は、スーツの漫才師は仕事なかったんじゃないかな。
カンノ:特に寄席芸人は大変だったかもしれないですね。
ハシノ:そうだね。田島貴男の昔のツイートで、オリジナル・ラブを最初にやり出した頃、ドラマーが全然いなかったんだって。80年代型の音色に特化したドラマーばっかりで、ちょっと細かいゴーストでとか、休符でニュアンスを出すとか、一流のスタジオミュージシャンでも全然理解されなくて苦労したらしいよ。当時は80年代のスタイルの方が仕事があったから、皆一斉にそっちにいったっていうのがあったみたいで、みんな「ドーン!パーン!」だったって(笑)
夕方のツイートが好評なのでついでに書くと、今ファンキーリズムで当たり前になってるスネアのゴーストノートを叩くドラマーが、なんと当時はいなかったんじゃ。みなスネアを2拍4拍しか叩かなかった。だからファンキーをやるときはまずスネアのゴーストの説明をドラマーにするところから始めたんじゃ
— 田島貴男 Original Love (@tajima_takao) January 17, 2017
オノウエ:オリラブやり始めのときって、そういう音像が全盛だったんですね。スムースジャズ的なことをやろうとすると、叩ける人がいない。
ハシノ:そう。そういうのが出来る人は本当のジャズマンしかいない。
カンノ:それで言うと今の時代は参照点が色々あるからそんなことはないみたいな感じですね。
オノウエ:参照点は色々あるけど、逆に言うとメインストリームがないから、どれをやってればいいか分からない。
ハシノ:「これやっとけば安パイ」っていうのがないよね。
カンノ:無いですね、今ね。やりづらいっすね~、指標がないから!大変だ!
オノウエ:なんでそんなに楽しそうなんだよ(笑)
カンノ:俺には関係ないからね(笑)
ハシノ:アハハハハッ!
カンノ:皆困ってるなぁ~、大変だなぁ、ミュージシャンたちは!頑張ってね!
オノウエ:お前もミュージシャンだろ(笑)