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サムオブ井戸端話 #029「日常化する"病んでる"現象」(後編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

"病んでる"ことがファッション化していることについて話しているサムオブメンバー。後編では"病んでる"ファッションの人が年相応に変化することについて、ヴィジュアル系やコミュニティを通して考えてみました。(前編)は下記リンクから。

 

カンノ:まふまふとか4s4kiみたいな病んでるムーブの音楽は増えていくのかな?

YOU:増えるかはわからないけど、存在はし続けるんじゃないかな。

オノウエ:やり続けるかどうかじゃない?たとえばさっき話したことで言うと、THE NOVEMBERSも変わってきたわけじゃん。

オノウエ:4s4kiが変わるのかどうか。

YOU:たしかに4s4kiはこの感じをやり続けるのかどうかは気になるね。一度そのキャラ付けをすると、年に合わせていくのが難しくなるよね。たとえば森高千里ってちゃんと老いることができたじゃん。

YOU:若いころに「私がオバさんになっても」って曲を出したけど、オバさんになった今もバリバリ活躍できてるっていう。「4s4kはそういう成長することができるのか?」って思う。たとえばギャルが結婚して子供ができたら、化粧もそこそこにナチュラルな格好をしてっていうことはたくさんあるじゃん。でも病んでるファッションの彼ら彼女らがちゃんとそうなれるのかが、おじさんは勝手に不安に思ってる(笑)だってお金がないんだもん。

カンノ:大雑把なことを言うとさ、ギャルってそんなに自意識はないと仮定しましょうよ。で、僕のイメージで言うと地雷メイクをする人というのは自意識が肥大した人なのかなと思ってたの。でも「病んでる」が日常化しているなら、もはやそんな自意識もないのかもしれないよね。

YOU:そこが俺はよくわかんなくなってる。

カンノ:僕らは「自意識過剰になってるからそういうメイクとかに走る」っていう考え方じゃん。でももはやそういうことでもない可能性は大きいよね。

YOU:インターネットは病んでる人がスターになりやすい場所なんだろうなと思ったな。

オノウエ:そういう病んでるファッションが何歳まで許容されるのかっていうのは出てくると思うんだよね。

YOU:エイジズムとかルッキズムとかいろんな言葉が出てくるけどさ、やっぱり生きていくんだから大人にならなきゃいけないんだよ(笑)

カンノ:THE NOVEMBERSの年相応の変化の話とかね。でも30代になってメイクをし出すというのも面白いけどね。

YOU:コミュニティをとおして「アイツは一抜けて大人になった」みたいなことになればいいけどね。

カンノ:たとえばヴィジュアル系の人って、年取っていくとメイクは薄くなっていったりするの?

YOU:それは人によるね。BUCK-TICKはバリバリメイクしてるし。DIR EN GREYはややこしくて、もともと黒夢のローディーをやってたから黒夢からメイク術を学んで黒夢っぽいデビューの仕方をしたんだけど、「自分の表現をするためにこの格好が邪魔になった」とか言って、坊主になってジャージ姿になってとか、やることが極端なの。それで上半身裸で入れ墨ゴリゴリに入ってて、めっちゃ胸にカッターで傷を入れる時期があったり。最近はムキムキになって超煽りまくるみたいな。

YOU:それでまた最近、1周回ってまたゴリゴリにメイクしてる。それでDIR EN GREYってギリギリヤンキーカルチャーなんですよ。ヴィジュアル系とヤンキーカルチャーが一致している最後の世代なの。

オノウエ:ヴィジュアル系がヤンキーカルチャーと接続していることが知らなかったな。

YOU:BUCK-TICKも群馬から出てきて、BOØWYの後輩だから。

カンノ:Xの後輩バンドにゴリゴリしごかれた人の話を聞いたことがあるな(笑)そこも千葉だしね。だから縦社会なんだよね。

YOU:しごきの世界だよね。

オノウエ:基本的にバンドカルチャーってそうだと思うんだけど、ヴィジュアル系がヤンキーカルチャーだと思わなくて。でもBOØWYって考えるとたしかにそうだね。

YOU:縦社会の話が出たけど、インターネットでは先輩の顔色を伺うみたいなことってない気がしていて。

カンノ:「インターネット縦社会」ってないの?

オノウエ:「インターネット縦社会」って定義上存在し得ないんじゃないかな。だって縦がないんだもん(笑)

YOU:横しかないから(笑)

カンノ:「インターネット縦社会」ってあったら面白いけどね。ネット上で先輩に会ったら「おはようございます!」って(笑)

YOU:ひろゆきが通ったらみんな「おはようございます!」(笑)

カンノ:ホリエモンが通ったらみんな「おはようございます!」(笑)

オノウエ:俺たちのインターネット観が古すぎるよ(笑)

YOU:2000年のインターネットバブルで止まってるよ(笑)でもそういう縦社会がないから成熟させてくれないよね。だからちゃんと老いた明るい先輩を見つけて幸せに暮らしてほしいですね(笑)流浪の民でずっといるのは無理だから。能力とお金がない限りは人間そんなに強くできていないから。

カンノ:組織とか帰属とか。

YOU:うっとうしいんだけど、そのうっとうしさは避けて通れないから。どこで老いることができるのかについては興味がありますね。

オノウエ:コミュニティがない状態で生き続けるのはやっぱり無理があるよ。

YOU:インターネットって薄っすら暗いなかで集合離散しているだけだから向上ってあんまりないよね。たとえばオンラインコミュニティとかオンラインサロンはあるけど、その中心メンバーがいなくなったらどうなるんだろう?

オノウエ:終わっていくだけなんじゃない?

YOU:引継ぎとかあるのかな?

オノウエ:でもたしかに、オンラインサロンのなかでは先輩後輩の関係ってあるのかもしれないね。あとから入ってきた人には先輩が教えるみたいな。

カンノ:「オンライン縦社会」か。

オノウエ:「オンライン縦社会」ってただオンライン上で先輩が後輩に教えてあげてるだけだよね(笑)

カンノ:「オンライン縦社会」ってただの「縦社会」か(笑)

YOU:でも結局、その世界でうまくやってるやつっているもんね。

カンノ:結局どの場所でも社会性とか社交性のあるやつが勝つみたいなね。

YOU:みんなそこに早く気付くべきだよ。

カンノ:結局ヤンキーが強いんだよね。

YOU:俺の友達のヤンキーも子供3人いて家建ててるやついるからね。一番最強だよ。

カンノ:だから病んでるメイクしてるなかでも社会が発生してさ、そのなかで社交性のある人がトップに立ってさ、病んでるメイクしてるのに家を建てるのかもしれない(笑)

YOU:それめっちゃ面白いじゃん。「病みママ」とか言って(笑)

カンノ:病んでる世界もヤンキー世界になっちゃってさ。

YOU:「フィジカルと場所を制したものが勝つ、以上!」みたいなね。ちょっと辛すぎる話をしてしまった気がするな(笑)

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