SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、オノウエソウ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。
歌手活動を引退する大御所ミュージシャンのニュースを目にすることが増えて「寂しいな」と思うのと同時に「当たり前だよな」とも思うYOU-SUCKメンバー。人前にさらされて「若いままで居てほしい」と思われがちなミュージシャンという職業を続けることの難しさと身の引き方について考えました。
YOU:結構前の話ですが、関ジャムのヤマタツ特集あったじゃないですか。あれを見ながらヤマタツの年齢を調べたんですよ。御年69歳。「ヤマタツ69歳か」と思って。それで近いミュージシャンの年齢をいろいろ調べていったんですよ。桑田佳祐が66歳。細野晴臣が結構上で75歳。矢沢永吉は「還暦過ぎてもロック」って言ってたけど72歳。で、意外なのが沢田研二は74歳。そして年齢言われても若い印象があるのが加山雄三で84歳。
カンノ:加山雄三はコンサートを引退するもんね。
YOU:そうだね。吉田拓郎も芸能界を引退したでしょ。中島みゆきももうライブしないらしいし。
カンノ:橋幸夫も歌手を引退するよね。
YOU:だからニューミュージック界隈の人たちが引退されるんですよ。「もう引退か…」って思ったりするけどさ、当たり前の話なんだよね。人間って当然等しく年を取っていくし、死に向かって突き進んでるわけだから。「もう疲れた。無理。お金も充分あるし、もう辞めます」っていうのは当然ありえるわけじゃん。でもミュージシャンって「もう引退か」とか「若かったのに」とか「つい最近までやってたのに」になりがちだよね。
カンノ:人前に立つ仕事って、途中から「自分のため」じゃなくて「人のため」みたいな気持ちになっていくんじゃないかな。桑田やヤマタツとかって自分の趣味嗜好はさておいて、ファンに求められる桑田像やヤマタツ像を崩すのが難しい立場じゃん。そうなると辞めるタイミングって難しいよね。「疲れたので辞めます」ってある程度自身が大きい存在になっちゃうと言いにくいというかさ。
YOU:「生涯現役」という威勢のいい言葉が蔓延っている中だったりするし。ミュージシャンって「年を取らない」って思われがちだから大変そうだなと思ってね。
カンノ・オノウエ:(笑)
YOU:なんならポール・マッカートニーも80歳ですよ。あとミック・ジャガーは78歳。そしてローリングストーンズはまだ活動している。ロック第1世代はまだギリギリ生きている感はあって。これはヤマタツも言ってたけど、「こういう年の取り方をして、こういう風に死にます」みたいなロールモデルがない文化だから。身の引き方をまだ誰も教えてくれてない。
YOU:これからいろんな場面で「身の引き方」というものを目にするんだろうなと思ってね。それで寂しい気持ちと、当たり前だよなって思うのと。あとロックミュージシャンの可哀想なところって、過去を振り返る企画で昔の若いころの姿がメディアで何回も流れるから、ものすごい植えつけられちゃうんだよね。たとえば沢田研二とかはさ、永久にパラシュートをつけて「TOKIO」を歌ってるときの映像が流れちゃうんだよ。
カンノ:それと最近のライブをドタキャンしたときの映像を比較されちゃったりね(笑)
YOU:そんなのやってらんないじゃん。
オノウエ:海外だとジョン・ライドンみたいな、当時のパンクムーブメントから来た人って年を取るのは本当に難しいよね。
オノウエ:今でもセックスピストルズの話は出るわけじゃん。あの当時はトリックスター的なことをやっていたわけだけど、年取ったらそれが正しかったなんて誰も思わないわけだし。それをジョン・ライドン自身が言わなきゃいけなかったりしてさ。あとYouTubeでDevoの最近のライブを見たんだけど、すげえ太ってるの。そういうのってロックミュージシャンやパンクスの人は大変だと思う。
カンノ:今ぱっと思ったんだけど、内田裕也って僕たちが物心ついたときからおじいちゃんだよね。で、ほぼあの姿しか知らないんだよ。若いころの内田裕也と言われても、全然ピンと来なくて。
YOU:政見放送とか見たことない?結構かっこいいよ。
カンノ:それは知ってるんだけど、なんかおじいちゃんの名残に引っ張られて、あれですらおじいちゃんに思えちゃう(笑)全然印象がおじいちゃんなんだよ。で、その年の取り方は逆に強いよね。
YOU:もうおじいちゃんのときはテレビに出まくってたもんね。これは若干ふざけた例えなんだけど、『スターウォーズ』でジェダイという正義の騎士が出てくるんですよ。で、師匠と弟子みたいなのがいるんですよ。ジェダイが死ぬとフォースっていう宇宙を漂う大きな力の中に魂が還っていくという設定なの。で、ジェダイが必要なときにフォースを使うと、その師匠と霊体みたいな形で会話ができるの。そのとき映される師匠の姿って若いときの映像だったりするの。おじいちゃんになって死んだのに若いときなの。あとダースベーダーって以前はアナキン・スカイウォーカーって名前のジェダイだったの。正義の騎士。最終的に悪の総帥になったダースベイダーが改心するのがスターウォーズのお話なんだけど、お話のラストのダースベイダーが死んだあとに出てくる幻影のシーンはダースベーダーの姿じゃなくて、ダースベーダーになる前の綺麗なアナキンの姿なの。だから、今言った感じで内田裕也がフォースの力を使って復活したら、僕らにとっては間違いなくおじいちゃんの姿で出てくるよね(笑)
カンノ:そうだよ、それでスニッカーズ食ってるよ。
YOU:マジでスニッカーズは食ってるね(笑)あと細野晴臣もそっちに近いよね。
オノウエ:あぁ、そうだね。
カンノ:細野晴臣って生まれたときからおじいちゃんでしょ?
オノウエ:そんなわけはないですね(笑)
カンノ:ロックの話が続いているけど、日本のヒップホップもそうだよね。
YOU:ヒップホップはマジでそうだね。これからだね。あと10年とかしたら「疲れたので引退します」っていうラッパーは普通に出てきそう。
カンノ:スチャのBoseさんは自分が五十路であることをラップに織り込んだりしてるし。60代、70代になっても現役のラッパーが日本ではまだいないからさ。どこまで現役であることを担うのか、または担わないのか。たとえばBoseさんは鎌倉に移住したじゃん。東京から離れて。
YOU:終活の1歩目感あるよね。
オノウエ:日本のヒップホップで60歳になった人っていないのか。
カンノ:近田さんは?
YOU:近田春夫、71歳(笑)
カンノ・オノウエ:71歳!?
YOU:近田春夫、すげえな(笑)
オノウエ:でも近田春夫はジャンル横断型の人じゃん。現役の人でっていうのはいないのかな?
カンノ:本当はECDなんだろうね。
YOU:ECDはそうだね。57歳で亡くなってるから、今だったら61歳だね。
カンノ:あと高木完さんやいとうせいこうさんとかね。でも現役ラッパーで言ったらライムスター、スチャダラパーとかになってくるよね。
オノウエ:だから本当に日本のヒップホップの歴史ってそれぐらいしかないんだよね。
YOU:歴史が短いから、これからその人たちがどう落とし前をつけていくのかを見ていくわけだから、まだみんな探り探りなんだよね。だから俺たちも探り探りやんなきゃいけないんだなって気付きが最近ありました。