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サムオブ井戸端話 #119『なぜVaundyは「replica」というアルバムタイトルにしたのか?』(前編)

SOMEOFTHEMのメンバーであるカンノアキオ、YOU-SUCKで音楽にまつわる井戸端話の文字起こしを毎週アップします。

 

Vaundyの2ndアルバム『replica』について語りたいYOU-SUCKメンバー。音楽界の第一線で活躍するVaundyが「複製」を意味するアルバムタイトルをつけたことの思想性と狙いと「やっぱり言わなくてもいいんじゃない?」と思ったことについて語りました。

 

 

YOU:Vaundyの『replica』というアルバムについて語り合いたいのですが。

YOU:どの曲も粒揃いで、良いアルバムだなと思いました。もともと「東京フラッシュ」という曲で出てきたときは、ロックというよりは…

カンノ:シティポップ?

YOU:う~ん…

カンノ:サチモス?

YOU:そうだね(笑)

YOU:それがあんなストレートなロックになるというか、「邦ロック」という言葉に近いニュアンスだと思うんだけど。

カンノ:紅白のパフォーマンスもロックバンド然としてたもんね。

YOU:でね、俺の周りのそんなに音楽を聴いてない人もVaundyは聴いてて。車でなんとなく流すのがVaundyだったりするよね。それはポップミュージックとして勝ってるなと思うの。

カンノ:たしかに、今の時代の「なんとなく流す」の筆頭はVaundyだろうね。

YOU:それはすごいことだよね。で、『replica』というタイトルに賛否両論が集まったよね。X(Twitter)で議論になったりして。「パクリは果たしていいのか?」みたいなレベルの低い話もいっぱいあったけど。そもそも現代において「レプリカしかない」という考え方はその通りでしかないよね。

カンノ:音楽が好きな人からすると暗黙の了解というかね。

YOU:音楽以外にも、それこそこの会話はサイゼリヤで収録してるけど、言ってしまえばサイゼリヤもイタリアンレストランのレプリカじゃん。

カンノ:えっ、そうなの?

YOU:うわっ、怖っ(笑)

カンノ:「イタリアと言ったら…」じゃないの?

YOU:「本場イタリアのサイゼリヤ」じゃないんだよ(笑)まぁ、つまり複製できるものはすべてレプリカなんだからさ。音楽だってCDに焼いたものはすべてレプリカだし。だから今の時代、レプリカなんて当たり前のものなんだけど、送り手のオリジナリティ”らしき”ものを受容して消費する感覚が強いなかで、一番売れてるミュージシャンの一人であるVaundyが『replica』とアルバム名で表現しているのはとても意味があることだと思った。しかもタワレコの広告で「オリジナルはレプリカの来歴から生まれる。」っていうコピーがポスターになっていて。

 

 YOU:そのメッセージの打ち出し方はかっこいいなと思ったよね。あんなメジャーフィールドでやってる人が「オリジナルってレプリカをどう積んできたのか」って言うところはすごくいいなと思った。

カンノ:「ぶっちゃける」みたいなことをやけっぱちとかではなく、自分の思想として表現している感はあるよね。

YOU:本人が一番わかっててやってるよね。

カンノ:前回話した「音楽ヤラセ話」にもつながるけどさ、自分の影響を語らないこともある種の本懐だったりするじゃん。

 

カンノ:「この人はこの音楽の影響だろうな」というものがあっても、ミュージシャン自身があんまりそれを口にすることもないじゃん。

YOU:本来は絶対に言わなければならないことではないよね。

カンノ:「それはどうぞご勝手に語ってください」っていうことだと思うんだけどさ。で、そういうことをすべてひっくるめて自分の表現とするというのは、たしかにあんまりなかったよね。

YOU:そうだね。でね、その一方で「オリジナルはレプリカの来歴から生まれる。」という言葉は、やっぱり当たり前といえば当たり前なんだよね。だから「これはレプリカです!」という強調でもなく、「これの俺のオリジナルなんだ!」という強調でもなく、「ただ堂々としていればいいじゃん」っていう思いにはなったかな(笑)

カンノ:それはレプリカの数が多かったんだよ。たとえば全曲eastern youthっぽい曲だったらなにも言わないでいいと思うんだよ。

YOU:「Vaundyがエモ方向に行ったんだな」って思うだけだよね(笑)

カンノ:そうじゃなくて参照点が様々あったわけでしょ。だからいろんなインプットの記録があって「あの曲が好き」「この曲は歌える」「そのリフ使えるな」みたいなものの蓄積が全35曲なわけでしょ。

YOU:たしかにそういうことかもしれないね。

カンノ:この「35曲」っていうのは、果たして何なのか?

YOU:この『replica』というアルバムタイトルに相応しいくらい、レプリカ性のある曲数ではあるよね。各曲自体も、その膨大な曲数もすべてレプリカ性が高い。

カンノ:だからコンビニみたいだなと思ったんだよね。「35曲」って僕からすると「曲数」じゃなくて「商品数」に思えたんだよね。

YOU:それは狙ってやってると思うね。

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